「家賃を上げるしかありません」
京都地裁のこの判決については、家主側は、これまで同様な判決がなかっただけに、困惑している様子だ。
代理人の谷口直大弁護士は、こう指摘する。
「判決は、全部おかしいと思っています。家主の収入と借り主の支出との割り付けの問題なのに、名目上のことだけ見て判断しているのは適切ではないからです。更新してから借り主がいつ家を出るか分からないから、更新料などがあるわけです。それで家賃が安くなっているのに、無効なら家賃を上げるしかありません。結局、消費者の首を絞める、視野が狭い判決ですね」
控訴するかどうかは、判決の内容や影響などについて家主と相談して決める考えだ。
賃貸住宅の業界でも、波紋が広がっている。
大手仲介業者のエイブルは、判決を受けて急に業務を変えることはないとしながらも、「今後の状況変化で、家主が更新料について考え直すことがあるかもしれません。敷引金については、無効とする判決が続いているので、もう止めようかと考えている家主もいるでしょう」と含みを残す。
関係者が特に注目しているのが、別の更新料訴訟で大阪高裁が予定している2009年8月27日の控訴審判決だ。これは高裁レベルで初の判断になるからだ。
家主らでつくる全国賃貸住宅経営協会では、「地裁の判決は残念ですが、高裁の判決を重要視しています。もし、更新料が認められないということになれば、被害は大きいです。収入が落ちて、大規模な修繕が遅れたり、できなかったりしますから。また、敷引金についても、敗訴が続いていますが、傷をつけたり滞納したりするケースが増えていますので、保険として徴収せざるを得ないと考えています」と話している。