大手百貨店にカジュアル衣料専門店「ユニクロ」が出店する模様だ。客離れが著しい百貨店にとって、ユニクロの集客力は魅力。ユニクロ側には高所得者を取り込む狙いがありそうだ。両者の思惑が合致したものと見られる。
秋に「西武百貨店」、「高島屋」も年明けに出店か
日本経済新聞は2009年7月24日付け朝刊1面で、ユニクロを展開するファーストリテイリングが大手百貨店に出店する、と報じた。09年秋をめどに西武百貨店戸塚店(神奈川県横浜市)に、年明けに高島屋新宿店に出店する。また、大丸と松坂屋を傘下に置くJ.フロントリテイリングとも交渉している、という内容だ。
ユニクロの2009年8月期(08年9月1日~09年8月31日)の営業利益は前期比23%増の1080億円で、過去最高益になる見通しだ。純利益は同比19.5%増の520億円。都心から郊外まで国内757店舗で、すでに手広く展開しているが、百貨店の出店で高所得者層を取り込みたいという狙いがある。
一方の百貨店は不況下で、ユニクロやH&Mのような低価格衣料に押され気味だ。
西武百貨店とそごうを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスの2010年2月期第1四半期の連結業績(09年3月1日~5月31日)で、百貨店事業の営業利益は前年同期比81.7%減の8億1900万円だった。
高島屋も業績低迷が著しい。2010年2月期第1四半期の連結業績で、百貨店業の営業利益は前年同期比93.4%減の3億2600万円。
回復の妙手が見つからない中で、ユニクロと手を組んだほうが得策だと考えたようだ。
西武百貨店とそごうを傘下にもつミレニアムリテイリングの広報担当者によると、西武百貨店戸塚店内にあるショッピングモールに、売り場面積1000平方メートル規模のユニクロが入る。
「ユニクロは集客力がありますので、今後も集客の必要がある郊外型店で入れるかもしれません」
と話している。
高島屋新宿店は12~14階部分にある映画館を09年8月末に閉店し、空いたところにユニクロが入るようだ。10階までの店舗と11階の催事会場を高島屋が運営し、11階から14階に入っているレストラン街、映画館、大型電器店、CDショップを高島屋の子会社、東神開発が管理している。東神開発広報担当者は、
「2010年に映画館の跡地に複数の専門店を入れようと考えています。ユニクロもそのうちの1つとして検討しています」
といっている。
高島屋広報担当者は、「決まっていないことについて何とも言えない」としている。
高級品置きつつ、「すそ野」広げる
大丸、松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングはユニクロの出店についてノーコメントだった。その一方で広報担当者は、
「お客さまに魅力ある店作りをするために、これまで百貨店と取引がなかったような企業との取り組みを考えています」
と語る。
大丸梅田店に09年3月、はるやま商事の紳士服店がオープンしたのも百貨店に縁がなかった若年層を取り込む狙いがあった。前例のない試みだったが、J.フロントリテイリングは「目標を上回る売れ行き」という。
「当社を含め、これまでの百貨店は中高年を対象にした高価格品や、ファッションはドレスアップしたものを重視してきました。そのため20~30歳代向け商品、デイリー、カジュアル品は弱かった、と反省しています」
とはいえ、依然として海外ブランドや高級品も扱っている。安い品と高級品が混在していて、百貨店の顧客に受け入れられるのだろうか。これについては、
「例えばシャネルの横にユニクロを置くことはありません。安い品を集めたフロア、ブランド品街というようにフロア構成を考えているので混在しません。高額商品は従来通り取り揃えながらも、『すそ野』を広げることで幅広いお客さまを対象にしていきます」
と話している。