2008年シーズンはパ・リーグ最下位だった福岡ソフトバンクホークス。それが09年のシーズンは、2年ぶりの6連勝をするなど堂々のトップ争いを演じている。OBの秋山幸二氏が監督が就任し心機一転した、ということもあるが、好調の理由の一つにアップルの携帯電話「iPhone 3G」を使った「データ戦略」があるというのだ。
移動中でもイメージトレーニングが可能
「iPhone 3G」を使った「データ戦略」というのは、ネットが繋がる環境ならば、どこに選手がいても球団所有のデータを「iPhone 3G」にダウンロードできるシステムを作ったこと。データとは、今シーズンにホークスが戦った全ての試合の動画情報。選手は自身の全試合のバッティングフォーム、投球フォームのほか、戦った他球団の全選手の情報を検索し、動画で見ることができる。バッターの場合は、「ホームラン一覧」「ヒット一覧」「凡打一覧」「三振一覧」と分けて検索できる。選手は自分のフォームを動画で見て分析、イメージトレーニングができるし、対戦相手の研究もできるというわけだ。
これまでは球団の資料室に直接出向くか、録画したDVDをパソコンで再生するしかなく、不便だった。それがバスや電車での移動中や、ちょっとした空き時間にも気軽に確認できる。ホームグラウンドの「福岡 Yahoo! JAPAN ドーム」で行われた試合ならば、翌日の夕方までには情報が整理されダウンロードできるようになっている。
「アプリ」完成まで半年を費やした
実はこのシステム、孫正義ソフトバンク社長の提案から生まれたのだという。ホークス広報によれば、秋山監督が就任の挨拶をしにオーナーでもある孫社長のもとを訪れたとき、
「iPhone 3Gを使って、選手に役に立つものが作れないだろうか。そのための協力は惜しまない」
という申し入れがあった。この提案を持ち帰り、企画されたのが先のシステム。ソフトバンクから提供された「iPhone 3G」は100台。開発チームは半年がかりで「iPhone 3G」用のアプリを完成し、シーズン始めから実用化させたのだという。
「選手達は常に野球のことを考えていますので、セカンドバックなどからさっと出し、動画を確認しています。前日の試合で気になることがあった選手はなおさらのようです」
これで、03年以来のリーグ優勝と日本一になることができるかどうか。