民主党幹部が繰り返し意欲を示してきた在日韓国人らへの地方参政権付与。ところが、ここに来て、幹部の否定的な発言が相次いで報じられている。異論も多く、政権交代の支障になりかねないと考えているらしい。マニフェストではどうなるのか注目される。
鳩山代表は、賛成が一転して慎重に
責任が重くなってくると、考え方も慎重になってくるようだ。
民主党の鳩山由紀夫代表は、幹事長時代の2009年4月、インターネットの番組で参政権付与に賛成して、「日本列島は日本人だけの所有物ではない」と発言して波紋を呼んだ。ところが、代表になり、政権も視野に入ると、発言が変わってしまった。
産経新聞の5月31日付記事によると、鳩山代表は、埼玉県内で行ったこの日の講演で、韓国人を含めた永住外国人への地方参政権の付与について、党内の異論を踏まえてマニフェスト記載を見送る考えを示した。講演では、市民の質問に対し、「個人的には前向きに考えるべきだと思うが、党内で結論が出ている状況ではない」と述べたという。
さらに、賛成派とされる岡田克也幹事長も7月18日、三重県内での講演で、次期衆院選のマニフェストには盛り込まない考えを示したというのだ。小沢一郎前代表ら幹部の間では付与すべきと考えているが、「党として意見集約がまだできていない」という。これは、翌日付の日本経済新聞が報じたほか、20日には韓国の中央日報も日本語版サイトの記事にしている。
民主党は、7月末にもマニフェストを発表すると報じられている。参政権の付与を盛り込まないのは、本当なのか。
同党の選対本部では、「議員だけの会議で検討されていますので、事務局では承知していません。マニフェストは、代表が最終的に決めて公表することになっています」とだけ話す。
総選挙を意識して、党内亀裂避ける?
新聞各紙などによると、民主党内の保守派が、世論の反対なども考慮して、在日韓国人らは帰化して日本国籍を取得すべきなどとマニフェスト記載に抵抗している。鳩山代表らは、総選挙を意識して、党内の亀裂を避けるべきだと、記載に慎重になっているというのだ。
参政権を求める運動を16年も続けている在日本大韓民国民団中央本部では、民主党のマニフェストについて、「特に聞いていません」としてこう話す。
「民主党で論議することで、うちでどうこう言うことではありません。参政権に賛同してくれる議員を応援しているだけで、それはどこの政党でもよいということです」
永住外国人の地方参政権については、1995年の最高裁判決に基づいて議論されている。総務省の選挙課によると、判決では、永住資格があっても外国籍のままでは憲法上、国政参政権は許容できないとしたが、地方参政権について傍論で言及。憲法上は禁止されているとは言えないとして、許容するかは国の立法政策の問題だとしている。
民主党では、98年の結党時に、地方参政権付与を基本政策に盛り込んだ。そして、同年と2000年に付与を認める法案を国会に提出している。08年2月には、当時の小沢一郎代表が、韓国の李明博次期大統領に実現への努力を約束し、同年6月には党内に検討委員会まで設置した。しかし、鳩山代表になってからは、09年6月5日に行った李大統領との会談では、参政権付与についての言及は避けている。
なお、自民党では、今回の総選挙でも、地方参政権付与を公約する方向にはないようだ。同党の情報調査局では、「付与を検討する可能性はあります。しかし、国民固有の権利ですので、憲法上、疑義があるということです。国と地方を分けるのもおかしい点があります。また、韓国では、2012年から在外国民にも本国の参政権を認めていますので、なぜ日本の選挙にも参加するのかということも議論になっています」と話している。