日本では一生涯、資産が形成されることがない
それに対してアメリカの家は、100年はもつし、古い家こそ価値が高いという見方が一般化している。だから、家には当然のように資産価値が生まれる。アメリカの典型的なサラリーマンは、30歳代のころに子育てのために住宅ローンを組んで庭付きの一戸建てを購入する。そして子育てを終えた50歳代に狭い家に買い換える。そこで手にした差額が老後の大事な資金源となる。いまは不動産市況が悪化しているが、それでも日本のように、建物の価値がゼロになるといったケースは少ない。
日本にはそれなりの企業で定年まで勤め上げても定年後の年金生活では、文字どおり年金以外の収入がほとんどない人が多くいる。これは何十年間も給与所得を得ても、それが資産へ変貌して果実を生むというふうにならないためだ。退職金が住宅関係の費用や子供への援助で消えてしまう、というのも追い討ちをかける。結果として一生涯、資産が形成されることがない。生命保険だけは多額にかけている人も多いが、死んだ後にいくら金をもらっても遅いだろう…。
この問題は今後も追及していく予定だが、今回はこの辺で。
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。