昔の服をはやりのデザインに変える「お直し」が、幅広い年齢の女性に人気を呼んでいる。「新しい服を買わずに済むので節約になる」「捨てないことで環境に貢献できる」というのが、お直しにハマる理由だ。自分でリメイクするという若い女性も増え、大阪と東京にある「お直しの学校」が関心を集めている。
低価格の新品を「リメイク」する20代
お直しには大きく分けて3つある。裾上げやサイズ変更をする「リフォーム」、虫食い穴や傷を修理する「リペア」、はやりの形にデザインを変える「リメイク」だ。
東京都世田谷区に2店舗構える「洋服おなおし専門店 直し家」では、持ち込み数が1年前に比べて2割増えている。なかでもデザイン変更の依頼が多い。
服部貴浩社長は、
「バブル期に買ったブランドの服や思い入れのある服を持ち込む中高年のお客さまが目立ちます。当時はやっていた肩パット入りの大きな肩や、ビッグシルエットを、細身に直すというケースが多いです」
と明かす。
ジャケットの肩幅の変更やシルエット変更で1万5000円ほどかかるが、同じブランドの服を新しく買うより安く済むと好評だ。
デザイン変更には職人の技が必要になる。オーダーメイドができるレベルを確保し、細かなニーズにも対応している。そのため1年前に始めたインターネットのオーダーでは、遠方からの依頼が増えている。
埼玉・千葉に6店舗を構えているツクダ・クロス・スタイル(千葉県柏市)。依頼の多くは裾上げやサイズ変更だったが、新品の購入が落ち込んだせいで減っている。その一方で、ここでもデザイン変更の依頼が増えている。
最近目立っているのは20歳代の若者だ。
「中高年と違うのは、着古したブランドものではなく、低価格の新品を持ち込むこと。1点もののビンテージを持ち込んだ20歳代の男性もいました」(佃由紀子代表取締役)
捨てるのはもったいないという意識が後押し
衣服裁縫修理業の市場規模は1127億7600万円(総務省04年サービス業基本調査)。不況下で節約志向が高まるなかで注目を集め、成長が期待されている。
さらに、日本リ・ファッション推進委員会という団体も立ち上がった。
消費者、商品を提供する業界関係者、服飾の専門家などが集い、洋服のお直しを広める目的で作られた。「お直し(0704)の日」を設定し、09年7月4日に23社・団体が集まりワークショップ形式の体験型イベントを開催。約800人が来場し、若い女性も多く訪れた。
「自分でリメイクしたい」女性が通う、お直しの学校もある。
リフォーム・リメイクの技術が学べるスクール「魔法の裁縫箱」は大阪・梅田と東京・渋谷で開校している。最近はリメイクブームもあって、入学者が増えているそうだ。
生徒数は梅田、渋谷とも各100人程度。梅田は20歳代後半から30歳代の主婦が多いのに対し、渋谷では20歳代の若い女性も挑戦している。
運営しているのは、輸入古着のリメイクを行っているアイ・アンド・アイ(大阪府枚方市)。梅田校マネージャーの川端未希子さんは、
「自分や子どもの服を直したいという動機で学ばれる方が多いようです。生徒さんのなかにはリメイクしたものをホームページやオークションで売ったり、名刺を作って営業活動をして、近所の人から仕事を請け負っている人もいます」
といい、女性が結婚しても家で続けられる仕事として注目が高まっている。
リメイクブームは今後も拡大するとみている。不況下で節約志向が根付いていること以外に、こんな理由もある。
「環境問題への関心が高まり、捨てるのはもったいないという意識が広がっていますが、服についても同じことが言えます。それに加えて、他人と同じ服を着るのを好まない若者が増えているというのもあります」