ロッテリアが満を持して売り出した「絶妙ハンバーガー」は、「おいしいと感じられなければ返金に応じる」という大胆な試みを取り入れ、話題になっている。ネット上では返金を求める人が殺到したらどうするのかとの意見もあるが、専門家は「なかなか上手いやり方だ」と見る。
「おいしくないから金返せなんて言えるか?」
ロッテリアが2009年7月16日に発売開始した「絶妙ハンバーガー」。12ミリ・80グラムの粗挽きのビーフパティ、フレッシュなレタス、トマト、玉ねぎをはさみ、西洋わさびソース・仏料理に使われるディジョンマスタードで味付けした。美味しいと感じられなければ、価格の360円の返金に応じるというのだから驚きだ。ただし、半分以上食べた場合は返金に応じず、1人1回まで、アンケートの記入が求められる。期間は7月31日まで。
発売当日、さっそく「絶妙ハンバーガー」を食べてみたという人がmixi日記で、「ちょい辛めの塩加減がgood」「これだけ肉厚なパテなのに、たくさんの野菜が入っているため、食べたあともさっぱりしている(中略)。思わず、もう一つ食べたくなってしまいます」などと書き込まれていた。ある男性会社員(26)も、「粗挽き肉のボリュームには驚いた。噛み応えがあり、ステーキを食べているようだ」と話しており、評判も上々のようだ。
もっとも、この返金に応じるという試み。ロッテリア広報は「商品の味・こだわり・品質をお客さまに約束したい。そんな意気込みでもあります」とアピールする。実際、「絶妙ハンバーガー」はあまりの売れ行きに一時は発売中止にもなった「絶品」シリーズの新作だ。そして、ロッテリアにとっては、1年以上の試行錯誤・開発を経た自信作でもある。
かたや、ネット上では「日本人の性格を見抜いた戦略だな」「おいしくないから金返せなんて言えるか?」「DQNが大量に押し寄せるな」「考えようによってはただで半分までは食えるのか」といった書き込みもあり、ロッテリアの戦略は大いに話題になってもいる。
「返品を希望する人は少ないのでは」
「ロッテリアの試みは、よく知られたマーケティング手法の1つです。ただ、外食産業では非常に珍しく、面白い取り組みです」
こう話すのは、企業の経営コンサルティングなどを手がけるMBA Solution(東京都渋谷区)の代表・安部徹也さんだ。安部さんによると、購入後の返金に応じる手法は「リスク・リバーサル」と呼ばれ、通信販売などの高額商品を扱う場合をはじめ、多くの業界でたびたび活用されているという。
売り手は、消費者が抱く商品購入前の不安・心配を緩和させることができる。「反対に、買い手は心理的なハードルが低くなります。購入前に躊躇していた気持ちが、返品できるならとりあえず買ってみようか、となるわけです。この手法を取り入れ、これまでにも売り上げが伸びた例は多々あります」
ただし、安部さんは、「今回のハンバーガーが360円と低価格ですから、急激に売り上げが伸びるかどうか、それはまだわからない」とする。それよりも、テレビ・新聞・インターネットほぼすべてで取り上げられたことを踏まえると、話題作りには非常に効果があったと指摘する。広告費換算すれば数億円にものぼるのでは、と見ている。
「日本人は常識的、行儀がいいところがあって、返品を希望する人は少ないのではと思います。たしかに一定数の返品は予想されますが、返品の際、アンケートに答えることになっています。これにより、今後の商品開発にお客さんの声を直接つなげやすい効果が期待できそうです。そういう意味でも、上手いやり方だと思いました。その後にも注目したいと思っています」