衆院総選挙の投開票日が決まり、夏の風物詩とも言える「24時間テレビ」との「バッティング」が話題になっている。番組のクライマックスは、タレントのイモトアヤコさんが挑戦するチャリティーマラソン。この時間帯が、開票速報の最も注目される時間帯とバッティングする可能性が高く、波乱含みの番組進行となりそうだ。
社長自ら「総選挙8月30日は困る」
現段階で発表されている24時間テレビの放送時間帯は、2009年8月29日の18時30分から、翌8月30日の20時54分まで。一方、大半の投票所で投票が締め切られるのは、8月30日の20時。この直後から各局の出口調査の結果がいっせいに放送されることになる。
選挙と、日本テレビにとっては看板番組とも言える24時間テレビのバッティングの可能性については、細川知正社長も、定例会見の場で「(選挙が)8月30日は困る」と述べたほか、6月25日に行われた制作発表会見では、総合司会の徳光和夫さんが、「そういうことになれば、心してやりたい」と述べるなど、関係者も、多少は視野に入れていた様子だ。図らずも、それが現実化した形だ。
さらに、例年20時台は、24時間テレビにとっては、恒例のチャリティーマラソンの挑戦者が、メイン会場にゴールする「クライマックス」。09年は「珍獣ハンター」として知られるタレントのイモトアヤコさんが126.585キロのマラソンに挑むことになっているが、例年に比べて知名度不足が指摘されているのも事実。「当確」が連発される中でゴールシーンを迎えることになるのは確実で、さらに番組の影が薄くなる可能性がある。そうなると、マラソンのスタートを前倒すなどの対応を迫られる可能性もある。
日本テレビの宣伝部では
「詳細は未定です。(本格的な検討は)ちゃんと解散してからなのでは」
と話すのみだが、番組を中継する地方局からは、早くもスタッフのやりくりを心配する声が出ている。ある地方局の担当者は、
「『24時間テレビ』ではローカル中継枠があるので、その準備をしないといけませんし、選挙の対応もしなければなりません。人のやりくりについては、これから考えます」
と話す。
「盆と正月が一緒に来たような状態」
「24時間テレビ」では、全国各地にチャリティー会場を設けて中継するなど、地方局にとっても負担が大きい。また、選挙特番の時は出口調査や「票読み」のために、スタッフを投票所や開票所に貼り付ける必要がある。いわば、「盆と正月が一緒に来たような状態」ともいえ、各局はかなりの苦労を強いられそうだ。
もっとも、今回のバッティング、必ずしもマイナス面だけではなさそうだ。日本テレビには、過去に選挙とのバッティングを上手く克服してきた経緯があるのだ。日本テレビにいくつかある「看板番組」のひとつが巨人戦中継だが、投票時間が20時まで延長された98年7月の参院選では、「NNN選挙&ナイター」と銘打って、特番と巨人-阪神戦を同時放送。選挙と野球中継を左右に分割する「新合体画面」と呼ばれる画面を開発した。
また、96年の衆院選は、日本シリーズ中継とバッティング。野球の間は画面をL字形に区切り、「L」の部分で、各党の獲得議席数や当確情報などを流す試みを行った。
96年の「日本シリーズ・第2戦&NNN総選挙スペシャル プロ野球・巨人×オリックス」の世帯平均番組視聴率は43.3%を記録(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。年間視聴率ランキングでは、紅白歌合戦に次いで2位にランクインしている。今回についても、視聴率の面では、必ずしも悲観する必要はなさそうだ。
ただし、この「バッティング危機」、イモトさんがどのように受け止めているかは不明で、イモトさんの公式ブログでは、7月16日現在、ケニアロケの様子が更新され続けている。