不況のあおりで高級ブランドが軒並み苦戦しているなかで、米ニューヨーク生まれのブランド「COACH(コーチ)」が元気だ。最新のコレクションでは、20代をターゲットに、色鮮やかなラインアップを登場させた。ブランドには珍しく、常に変化を追求する戦略がコーチにはある。
赤、ピンク、スパンコールを多用
2009年秋冬コレクションでは、新しいライン「COACH POPPY」を発表した。
赤、ピンク、ブルーといった「ヴィヴィッドカラー」を多用し、素材には光沢感のある革(パテント)やスパンコールを使っている。落書き風の文字が書かれた遊び心のあるトートバッグもあり、従来のコーチとはまったく違う印象だ。
バッグの価格は3万4650円~11万5500円。小さめのショルダータイプなら3万円台で買える。 コレクションに合わせて女の子のキャラクターも初登場した。プードルのようなヘアスタイルに、大きな目、長くて細い足をしたキャラは「POPPY(ポピー)ちゃん」といい、渋谷店にはポピーちゃんプリクラが置かれている。専用サイトでは動画などのコンテンツが楽しめる。
OLから中高年まで幅広い層に人気があるコーチだが、今回、ターゲットとするのは20歳代だ。
その狙いについて、コーチ・ジャパン、コーポレート・コミュニケーションズの担当者は、
「COACH POPPY コレクションは消費者調査に基づいて開発されました。調査によると、コーチは30 歳以下の若々しく、カジュアル志向の市場でまだまだシェアを拡大していく余地があることがわかりました。コーチ POPPY の特徴は、明るくカラフルな色、デザイン、スパンコールなどの素材使いです。従来のコーチ・ファンに加えて、新しいお客様や年齢層もひきつけています」
と説明する。
同世代に人気がある女性誌とのタイアップも積極的に行っている。
東京・渋谷のコーチでは女性誌「PINKY」(集英社)とコラボレーションしたイベントを09年7月8日に行い、ターゲットと同世代のタレント、木下優樹菜さん(21)が「1日店長」に就任した。イベントはテレビで取り上げられ、木下さんが紹介したハンドバッグは「大変好調な販売につながっている」(コーチ・ジャパン)。Poppyコレクション全体の売上も好調だ。
日本での売上げは08年度まで右肩上がり
トートバッグに用いられている落書き風の柄のポーチを付録につけたのは、「MORE」7月号(集英社)。集英社によると、前号と比較して売れ行き、評判ともによかったそうだ。 「MORE」編集部は、
「新しいコーチの魅力はカジュアルでポップなところです」
と話している。
米ニューヨーク生まれのコーチは、ブランド全盛期の1988年に日本に初上陸し、革を使ったバッグや財布などの小物が幅広い年代の人気を集めた。その後、2001年から「C」のロゴを全面にデザインしたバッグ「シグネチャー・コレクション」が人気商品となった。革ではなく、ファブリック(布地)を使った製品も登場した。
日本での売上げは右肩上がりを続けていて、08年度(07年7月~08年6月)の売上高は654億円だった。ちなみに、07年度は572億円。高級ブランドがめっきり売れなくなるなかで、コーチの伸びは目立つ。
コーチ・ジャパンは、
「コーチは常に新しさを追求し、消費者を重視しています。積極的に市場調査を行うことで消費者の声に耳を傾け、同じ目線に立ち、そして、品揃えを新鮮かつ適切に保つことにより、変化する消費者のニーズにこたえる努力をしています。『新しさの追求』『適切であること』『価値の提供』というコーチの概念は、スタイリッシュで、ますます価値志向になってきている日本の消費者に受け入れられています」
と話している。
多くの高級ブランドが「変わらないこと」をよしとするなかで、コーチの姿勢は注目される。