夏場のジメジメした湿気を快適に過ごすため、ついつい押してしまうエアコンの「除湿」ボタン。ただ、「除湿」といってもいろいろな方法があり、場合によっては「弱冷房」を選択した方が、除湿もできて、電気代が安く済むこともあるそうだ。どういう使い方が一番賢いのだろうか。
除湿量は「除湿」よりも「冷房」の方が上
東京電力は2009年7月9日、「エアコンの冷房と除湿の上手な使い方」を発表した。首都圏の主婦約300人を対象にインターネットで調査を実施。それによると梅雨時や夏場などジメジメするときに、エアコンの除湿モードを使うという人は65%。その理由として、「除湿の方が湿気がとれると思うから」と回答したのが最も多い70%で、「電気代が安いと思うから」と回答した人も19%いた。除湿モードの方が冷房モードより効果的に除湿でき、家計にもいいと考えられているようだ。
だが、東京電力によると、こうした除湿モードの理解の仕方は正しくないという。一体どういう事なのか。
エアコンの「除湿」は、冷たい水の入ったコップに空気中の水分が結露するのと同じ原理。空気を冷やして部屋中の湿気をとっているという意味では冷房も除湿も同じだ。空気を強く冷やして部屋中の温度を下げることに主眼を置いたのが冷房モードで、空気を少し冷やし、温度をできるだけ下げずに湿度を下げるのが除湿モードとなる。空気の冷やし方は除湿の方が弱いため、除湿量では冷房よりも劣る。
また、除湿の方が「電気代が安い」という認識も正確には正しくないという。確かに、設定24度で1時間あたりの電気料金をみると、冷房が11円なのに対して、除湿は約4円と3倍近く開きがある。だがこれは除湿モードが昔からある「弱冷房除湿」だった場合。最近のエアコンでは、機種によっては「再熱除湿」という仕組みを採用していることがあり、その場合の電気料金は約15円と、冷房よりも高くつくのだという。
「再熱除湿」は電気を消費する
再熱除湿とは、空気を強く冷やして除湿量を増やす一方、冷やした空気を吹き出す際に再度ヒーターで暖め直すというもの。10年ほど前から現れた方式で、現在ではパナソニック、三菱電機、東芝、シャープ主要メーカー全ての上位機種に採用されている。冷房モードほどではないが、「弱冷房除湿」よりも多くの湿気をとることができ、温度の低下も抑えることができるので「秋の長雨など、肌寒い日に湿度だけ下げるのに適しています」(パナソニック)とのこと。だが、ヒーターで暖める分、電気を多く消費する。
東京電力の担当者は、「まず、エアコンを買う際に、その機種の『除湿』が『弱冷房除湿』なのか『再熱除湿』なのか確認することが大事」とした上で、各モードの特性を理解して使い分けることを推奨する。短時間で温度も湿度を大きく下げたいときには「冷房」、少ないエネルギーで長時間使用したいときは「弱冷房除湿」、就寝時などには「再熱除湿」を使うといった具合で「何に重きを置くかですね」と話している。
だが、機種によっては「除湿」の際に「再熱除湿」と「弱冷房除湿」の切り替えができないものもある。そうした場合は「冷房モードで温度を高めにすれば『弱冷房』になります」(電機メーカー)とのことだ。
東京電力では扇風機をエアコンと併用することも勧めている。設定温度を2度上げて扇風機を使用した場合、消費電力が22%削減できるという。また、室外機の通風口が植木やゴミで塞がれていると冷房効率がダウンする。「室外機の置き方にも注意しましょう」と呼びかけている。