演技だけでは評価できないと異論も
総じて言えば、デーブ・スペクターさんが言いたいのは、日本のドラマは、まずキャストありきでアイドルの獲得ばかりに走り、抑制の効いた実力派俳優を起用しないことに問題があるということらしい。
一方、ドラマ評論家の中町綾子日大芸術学部教授は、日本のドラマは様々な見方で評価できると話す。
「日本の視聴者には、演技のよさを求めている人ばかりでなく、そうでない人も多くいます。感情表現の細やかさ、深さに重きを置いたのが、伝統的なドラマの見方。一方で、そんなドラマを『ウザい』などと敬遠する人もおり、伝統的でない表現のドラマも高視聴率を得ています」
その例として、中町教授は、水嶋ヒロさん主演で2009年1~3月にフジ系で放送された「メイちゃんの執事」を挙げる。「ストーリー性もありながら、『キャラ萌え』という感じで、水嶋さんがブレイクしました。心情表現は細やかというよりも、カリカチュアされたものでしたが、それが魅力となっていました」
そして、織田裕二さんや阿部寛さんのように役作りを大切にしている場合もあるが、必ずしも高視聴率に結びついていないケースもあることを指摘する。
さらに、ドラマについて日米の文化の違いもあるのではないという。「しっかりした脚本メソッドや緊迫感のある演技は確かに見応えがあり、高く評価されます。しかし、日本のドラマには、時代とビビッドに呼応するよさがあります。それぞれの人が、それぞれの見方でドラマを楽しんでいる。そのひとつに、自分のいまの感覚にぴったりくる表現を探して見ていることも多いのではないでしょうか」
中居正広さん主演の「婚カツ!」は、低視聴率だったものの、ビデオで見る録画率は高かった。中町教授は、こう語る。
「表現は、エキセントリックなところもありましたが、コミカルで気持ちよいものでした。学生たちは、『なぜ週刊誌に叩かれたのか分からない』と言っていましたよ」