日本興亜損害保険が「お家騒動」で紛糾している。筆頭株主の米投資会社が2008年に続いて兵頭誠社長の再任に反対したのに続き、兵頭社長と対立する松沢健前社長が損害保険ジャパンとの統合反対を表明して2009年の株主総会に乗り込んだのだ。総会は大荒れの末、兵頭社長の再任を何とか可決したが、混乱が続くと、生き残りをかけた統合計画にも影響が出かねない情勢だ。
保険金支払いの先送り問題も浮上
「統合で得をするのは損保ジャパン。日本興亜は大損する」。日本興亜の松沢健前社長が兵頭社長に送りつけた文書だ。文書は「損保ジャパンはサブプライム関連で大きな痛手を受けた」と指摘し、「日本興亜の資産が穴埋めに使われる」と主張した。
松沢氏は保険金不払い問題が発覚した直後の2007年3月、兵頭氏に社長を譲って会長に就任した。08年6月には会長も退任したが、「もともとは側近だった兵頭氏が松沢氏を煙たがり、追い出しにかかった」(業界関係者)のが確執の背景、とのうがった見方もでている。
一方、日本興亜の筆頭株主の米投資会社、サウスイースタン・アセット・マネジメントは09年の株主総会でも兵頭社長の再任に反対を表明した。サウス社は兵頭社長の手腕を評価しておらず、損保ジャパンとの統合にも賛否を明確にしていない。松沢前社長とは親密とされ、「松沢前社長はサウス社と反・兵頭陣営を築きたい思惑」ともささやかれる。
そこに浮上してきたのが、日本興亜の保険金支払いの先送り問題。日本興亜の株主でもある元常務が「09年3月期決算かさ上げのため保険金支払いを先送りした」と指摘し、同社の監査役に兵頭社長らを訴えるよう求めた。事実なら経営を揺さぶる大問題で、監査役は「違法行為は認められない」と却下したが、元常務は納得せず、株主代表訴訟を準備している。元常務と松沢前社長は互いに無関係と強調するが、日本興亜幹部は「元常務も前社長と裏で組んでいる」とみる。