「日本」の読み方を「にほん」か「にっぽん」に統一する意向はあるか――。こんな日本国号に関する質問書を、民主党の衆議院議員が提出した。言われてみればたしかに、「にほん」と「にっぽん」の読みが混在している。NHKの場合、国号は「にっぽん」と表記するようにしているという。
「どちらか一方に統一する必要はない」
民主党の岩國哲人議員が「日本国号に関する質問主意書」を提出したのは2009年6月19日。岩國議員は国号に2つの読み方があることをかねてから疑問視しており、今回の意見提出に至った。6月30日の閣議では、質問に対して「『にっぽん』又は『にほん』という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない」と答弁することを閣議決定した。
岩國議員の質問主意書によると、読み方に関する議論はこれまでにも、たびたびあったようだ。岩國議員は、佐藤栄作内閣の1970(昭和45)年の閣議で話題になった際には、「『日本』の読み方について、『【にほん】でも間違いではないが、政府は【にっぽん】を使う』と、『にっぽん』で統一する旨の閣議決定を行ったが、法制化には至らなかった」と書いている。
ただ、これに対して、答弁書では「『日本』の読み方については、御指摘のような閣議決定を行っていない」としている。内閣府総務課にも聞いてみたところ、「正式にはそのような話はない」とした。
「ニッポン」は耳にのこりやすい
ところで、こうした揺れた表記に関して、何かルールはあるのだろうか。NHKの場合は、どのように対応しているのだろうか。NHK広報はこう話す。
「『日本』を正式な国号として使う場合には『にっぽん』、そのほかの場合は、必要に応じて使い分けています」
もっとも、ではなぜ、国号は「にっぽん」と読むことにしたのか。それは1934(昭和9)年に遡る。NHK放送文化研究所の用語・表現グループの説明によると、当時、放送用語に関する委員会が立ち上がった。第1回の議題が「にほん」「にっぽん」の読みに関して。2つの読み方があっては、利用者が混乱するだろうと配慮したためだ。委員会には文部省の関係者や国語学者が集まり、時間をかけた議論の末、NHKでは国号を表す際には「にっぽん」とすることを決めたのだ。
同時期には、文部省臨時国語調査会が国名の呼称の統一案として「にっぽん」にするとしたが、政府では採択されなかったという。結局、正式な決定はないままに現在に至っているのだそうだ。
ちなみに、NHK放文研によると、「にっぽん」には耳に残りやすい印象を与え、反対に「にほん」は言いやすく、口語では最近、こちらが多用される傾向にあるようだ。もっとも、2つの表記には日本語の慣例や言い回し、言いやすさなどが関係しており、1つに統一しきれないのが実情だ。そのため、NHK放文研は、「文脈や言葉の響き、あるいは会社名、内容や時代設定によっても(言葉遣いの)判断は違ってくるのです」と話している。