「ニッポン」は耳にのこりやすい
ところで、こうした揺れた表記に関して、何かルールはあるのだろうか。NHKの場合は、どのように対応しているのだろうか。NHK広報はこう話す。
「『日本』を正式な国号として使う場合には『にっぽん』、そのほかの場合は、必要に応じて使い分けています」
もっとも、ではなぜ、国号は「にっぽん」と読むことにしたのか。それは1934(昭和9)年に遡る。NHK放送文化研究所の用語・表現グループの説明によると、当時、放送用語に関する委員会が立ち上がった。第1回の議題が「にほん」「にっぽん」の読みに関して。2つの読み方があっては、利用者が混乱するだろうと配慮したためだ。委員会には文部省の関係者や国語学者が集まり、時間をかけた議論の末、NHKでは国号を表す際には「にっぽん」とすることを決めたのだ。
同時期には、文部省臨時国語調査会が国名の呼称の統一案として「にっぽん」にするとしたが、政府では採択されなかったという。結局、正式な決定はないままに現在に至っているのだそうだ。
ちなみに、NHK放文研によると、「にっぽん」には耳に残りやすい印象を与え、反対に「にほん」は言いやすく、口語では最近、こちらが多用される傾向にあるようだ。もっとも、2つの表記には日本語の慣例や言い回し、言いやすさなどが関係しており、1つに統一しきれないのが実情だ。そのため、NHK放文研は、「文脈や言葉の響き、あるいは会社名、内容や時代設定によっても(言葉遣いの)判断は違ってくるのです」と話している。