「花道を用意しようと、ずるずる」
辞任要求を巡って、なぜ、これほどまでにこじれてしまったのか。
一山側の訴訟代理人をしている中山修弁護士は、こう説明する。
「『生き仏』と崇められる貫主の名誉を考えて、花道を用意しようと円満解決を求めたためにずるずると来てしまいました。辞任を口頭での約束に留めたのは、名誉を考えてあえて文書にしなかったからです。契約書は相手方寄りのきれいごとだけの書面になりましたが、密約があったので和解しました」
ただ、小松玄澄貫主側が「白紙に署名」などとしていることについては、「弁護士立ち会いなので、そんなことをさせるはずがないです」と否定している。
一方、貫主側の橋口玲弁護士は、「訴状の中身を拝見していないので、現時点でのコメントは控えさせていただきます。いずれ裁判を通じて真実を明らかにしていきたいと思っております」とだけ答えている。
とはいえ、争いを表ざたにはさせない努力は続けているようだ。
今回の善光寺御開帳では、一山側は、その前に訴訟を起こすことを決めながら、実際の提訴は御開帳後にずらした。地元の奉賛会から、「紛争を表面化させないように努めてほしい」と要請を受けたからだ。
ただ、一山寺院からは、争いの長期化を懸念する声が出ている。ある住職は、こう漏らす。
「われわれとしては、表ざたになって、信徒の恥になったり、社会に迷惑をかけたりすることのないように話し合いに努力してきたつもりです。しかし、早く善光寺を正常な姿に戻さないと、何万人もの信徒の皆さんに申し訳ないと思っています。坊さん同士でいつまでも争いごとをするなんて、そのイメージや尊厳を自ら傷つけているようなものですから」