宮沢りえさんのヘアヌード写真集などを巡って紛糾した児童ポルノ禁止法改正案の審議。その後も与党の法案提出者が、自らのブログで、誤解されたと訴えたうえで、民主党案を批判している。こんな混乱の中で、修正して可決するというのは本当なのか。
法案提出者がブログで「誤解」と訴え
児童ポルノなのか、そうでないのか――。17歳で撮ったともされる宮沢りえさん(36)の写真集「Santa Fe」。2009年6月26日の衆議院法務委員会で取り上げられ、新聞各紙やネット上でも話題になった。
これに対し、法案提出者である自民党の葉梨康弘議員が、発言が誤解されたとして、自らのブログで7月2日、大反論を繰り広げている。
葉梨議員は、りえさんの写真集を1年以内に廃棄しろと発言したと一部の新聞が誤報したと主張。自らは、見ていないため児童ポルノか判断できず、「そんな直截的な答弁は行っていない」と反論した。新聞やネット上の情報については、「誤解による決めつけ」としている。
そのうえで、民主党案こそ、児童ポルノの定義があいまいで、もし通れば「かなりアブナイ」と断じた。
とはいえ、葉梨議員の説明だけでは結局、「Santa Fe」が児童ポルノでないのか、はっきりしない。衆議院法制局に問い合わせたという回答が、「多分『サンタフェ』は現行法の『児童ポルノ』に当たらないのでは」。これでは、児童ポルノとみなされる可能性は依然あることになる。実際、法案提出者自ら、このブログで「『児童ポルノ』に該当するものは、どんなに有名な女優であってもアウト」と述べているのだ。
ところが、新聞各紙によると、与党と民主党は2日から修正協議に入り、お互いに歩み寄ったうえ、今国会で成立を目指すということで一致したという。ただ、混乱状態の中で、どのように事態を収束させるのかは見えてこない。
表現の自由に抵触する部分が増すと弁護士
与党案では、児童ポルノについて、現行法の定義に変更を加えていないとしている。それは、児童のヌードなどのうち、「性欲を興奮させ、刺激するもの」ということだ。
もし、与党案の定義通りなら、どんなヌードなどがそう認定されるのか。この問題に詳しい奥村徹弁護士は、判例などをもとにして、こう説明する。
「性器を写真で大きく、映像で長時間扱ったり、着衣をめくって性器を見せたり、みだらで扇情的なポーズを取っていたりした場合です。また、裸の女の子がたくさん写っているケースもそうですね」
もっとも、医学書や家族の記録のためのヌードなどは除かれている。
この判例などからすれば、「Santa Fe」は、児童ポルノに当たらないという。「股を開くなどして露出しているわけではありませんし、性欲を刺激するものとは考えられないからです」。
ただ、奥村弁護士は、単純所持を禁じれば、これまで以上に表現の自由に抵触する部分が多くなってくるとして、安易な立法化に危惧の念を示す。
「問題は、国会での議論がいい加減で、レベルが低いことです。所管省庁が判断するべきというのは無責任な話で、法案を作った人が解説するのが筋だと思います。与野党が水面下で議論するというのも、納得できません。これでは、法が成立しても、自白を強要されたり、別件逮捕に使われたりする危険が高くなるでしょう。実務家、専門家が法案をよく練って作るべきで、議員立法には無理があるんです。確かに、単純所持は禁じるべきという方向だとは思いますが、政府が責任をもってきちんと法案を出すべきでしょうね」