いわゆる「リーマン・ショック」で経営陣や従業員の報酬の大幅カットに踏み切った米大手金融機関が、相次いで報酬の引き上げを計画しているという。競合他社への人材流出を恐れての措置だが、多くの企業が政府から公的資金の注入を受けているだけに、世論からその「強欲」ぶりに反発は必至だ。
米シティグループ従業員の基本給50%値上げ
2008年後半はサブプライムローンの破綻が相次ぎ、いわゆる「リーマン・ショック」が全世界を襲った。リーマン・ブラザーズのように破綻した大手金融機関もあれば、公的資金の注入で延命にこぎ着けた金融機関も少なくなかった。金融機関の支援を議会で検討する際、公聴会などで、従業員や幹部の高給ぶりが激しく非難されたのは記憶に新しいところだ。
ところが、この1か月ほどで、これらの従業員の報酬引き上げをめぐる動きが活発化している。
例えば英オブザーバー紙は09年6月21日、
「ゴールドマン・サックス(GS)のスタッフは、創業からの140年で最も多いボーナスを期待できそうだ」
と報じている。GS側は、直後にこの報道を否定したのだが、およそ10日後の7月3日には、米ウォール・ストリート・ジャーナルが具体的な引き上げ額を報じている。09年の従業員1人当たりの報酬は70万ドル(約6700万円)に達する見通しで、リーマン・ショックの影響を受けた08年(36万3000ドル、約3500万円)の約2倍の水準。リーマン・ショック前の07年(65万1000ドル、約6240万円)の水準を上回るのだという。
報酬引き上げはGSだけではない。ニューヨーク・タイムズ紙が6月24日に報じたところによると、米シティグループは従業員の基本給を50%引き上げる方向で検討しているという。ボーナスが値下がりした分を、基本給の引き上げで「穴埋め」するのが狙い。ストックオプション(自社購入権)の新たな付与も検討されているという。