皆既日食が、国内で46年ぶりに観測できる日が近づいてきた。天気がよければ、東京でも部分日食が見られる。中には、黒い下敷などで見ようと思っている人もいるかもしれない。しかし、それはとても危険というのだ。
赤外線を通しやすく、網膜が焼けてしまう
国立天文台も注意呼びかけ
太陽に月がすっぽり重なり、神秘的な光景が広がる皆既日食。その天体ショーがある鹿児島県の奄美大島北部から種子島南部にかけては、2009年7月22日の当日に多くのツアーが組まれ、「日食ブーム」に沸いている。
東京のプラネタリウムなどでも、解説イベントが行われ、このブームで満員状態のところが多いようだ。
鹿児島以外の全国でも、当日は、天気次第で、部分日食が見られる。東京や大阪でも、7~8割ほど太陽が隠れる計算だ。
楽しみにしている人も多いが、気をつけないと落とし穴が待っている。それは、誤ったやり方で見ると、失明する可能性があるということだ。
子どものころに教わったかもしれない、黒い下敷やススを塗ったガラス板を使った太陽観察。国立天文台のホームページによると、それは誤ったやり方になるというのだ。サングラスやゴーグルなどもダメという。
理由は、たとえ紫外線をある程度抑えたとしても、目に見えない赤外線を通しやすく、網膜が焼けてしまう危険があることが挙げられている。
この症状は、日光網膜症と呼ばれる。厚労省の保健統計室によると、調査のあった2002、05年の患者数はゼロ。10月時点なので、日光の強い時期でないこともあるものの、それほど多いわけではないようだ。しかし、海外では、日食を誤ったやり方で観察して、網膜症にかかった例が多数報告されており、今回も患者が出ないとは言い切れない。
専用の日食グラスなどが必要
日光網膜症にかかると、どうなるのか。
網膜症に詳しい福岡県の荒川眼科医院院長の荒川哲夫さんは、こう話す。
「冬山登山などで照り返しを受けてなる雪目症と同じですよ。網膜の黄斑部に紫外線などで軽いやけどを起こすということです。腫れたり、水が溜まったりして、斑点になって残ることがあります。斑点化してしまったら、眼球の神経がやられていることになるので、一生残ったままになってしまいます。そうなると、周りは見えても、中心部がぼけて黒く抜けたような感じになります」
もちろん、きちんと治療しないと、失明もしてしまうそうだ。
日食では、太陽が隠れるものの、荒川さんは、それでも危険だという。「一瞬、太陽を見て、目をつぶると斑点のようなものが見えますよね。軽いものは治りますが、日食でずっと凝視していれば危ないですね。特に、分別のない子どもは見てしまう傾向があります」。
こうした危険から、国立天文台のホームページや日本眼科医会のポスターなどでは、誤ったやり方で日食を観察しないよう呼びかけている。
日食の観察用には、専用の日食グラスや遮光板などが販売されており、これを使って時々目を休ませれば網膜症にはかからないようだ。量販店などで、300~1500円程度で売られている。ビックカメラによると、東京でも部分日食が見られると、日食グラスなどの売り上げが伸びてきているという。