月間1億ページビュー以上の人気携帯サイト「R25式モバイル」が突然、終了することになった。無料でニュースや便利情報を提供し、20~30代の男性サラリーマンに重宝がられていたが、広告収入が期待通りに伸びず、モバイル版は撤退することになった。携帯サイトでの「広告モデル」の展開は難しいということなのか?
月間1億ページビューでも広告収入伸びず
R25式モバイルは、リクルートのフリーペーパー「R25」のモバイル版として、2005年7月にスタートした。R25に掲載している情報コラムのほか、政治・経済のニュースやスポーツ速報、乗換案内などを無料で提供。フリーペーパーと同じく、M1層(20~34歳の男性)の支持を得て、ユニークユーザー数100万以上、月間1億3000万ページビューの人気サイトに成長した。
しかし利用者の反応は良かったものの、ビジネス的には順調ではなかった。R25元編集長の藤井大輔氏は著書『「R25」のつくりかた』の中で、
「(ページビューの多さが)収益に必ずしも結びついていかなかったのです。ナショナルクライアントの広告効果を高める手段としてモバイルを活用したいというニーズが、顕在化しなかったことが原因です」
と記している。リクルート広報部も
「R25は、紙媒体・PCサイト・モバイル・リアル広告というクロスメディアとして広告主に提案していたが、モバイルに広告を出稿したいというクライアントのニーズが低かった。モバイルよりもPCサイトに出稿したいという要望が強かったので、今後はPCサイトに資源を集中したほうがよいと判断した」
と説明する。結局、R25式モバイルは2009年7月30日をもって、サービスを終了することになった。同時に兄妹サイトの「L25 mobile」もサービスを停止する。
モバイルサイトなのに、コストをかけすぎた?
このように、R25の当事者は「モバイル広告へのニーズが少なかったこと」をサービス終了の理由としているが、「コストをかけすぎたのが敗因」と指摘する業界関係者もいる。ある大手サイトの幹部は、
「R25式モバイルは、立ち上げ時の交通広告の巨大プロモーションやニュースコンテンツの買い揃えなど、目の前の事業性に比べて、多額の費用をかけすぎたのではないか。ネット事業は小さく生んで大きく育てるものだが、そのセオリーと違っていた」
と指摘する。同様に、モバイルビジネスに詳しいITコンサルタントは次のように述べる。
「お金をかけすぎているのが明らかだったので、サービス終了と聞いても意外ではなかった。モバイルの場合は、まずスモールスタートで始めて、ユーザーの動きに合わせながらサイトを充実させていくほうがいい」
ネットでは、R25式モバイルの終了を受けて、「無料勝手サイト終わりの始まり?」(はてなブックマークコメント)といった「広告モデルの携帯サイト」そのものに対する懐疑的な声も出ている。しかし、このITコンサルタントは
「R25の後にスタートしたミクシィやグリーのモバイル版が広告モデルで成功しているのだから、モバイルへの広告ニーズがないというのは言い訳にしか聞こえない。むしろリクルートのやり方が、モバイルビジネスに向いていなかったと見るべきだ」
と反論する。前述の大手サイト幹部も、モバイルでの「広告モデル限界論」には否定的だ。
「大手広告主のモバイルへのシフトは、むしろこれからが本番。ただ今のところは、デジタルコンテンツ販売などの広告主が多いので、損益分岐点をかなり低く抑えていかないと、事業として継続するのは難しいということだろう」