民主党の鳩山代表秘書が個人献金を虚偽記載した問題は、国会議員として献金額が突出して多いため、さらに拡大する可能性が出てきた。ただ、その動機は、はっきりしない。鳩山氏側は、代表個人のお金を秘書が付け替えたと主張しており、それだけでは政治資金規正法違反で立件しにくいという指摘も出ている。
献金記載は、故人から献金していない人まで
民主党は、3年後に企業献金を廃止する政治資金規正法の改正案を国会に提出ている。清潔だとする個人献金にシフトする流れを作るためだ。
それが、今回の虚偽記載問題で、自ら水を差すような事態になってしまった。
きっかけは、朝日新聞が2009年6月16日付朝刊で、鳩山代表の政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の収支報告書に、個人ならぬ「故人」が献金者として記載されていると報じたことから。このときは、5人分の120万円だった。
その後、週刊新潮や共同通信が24~25日、献金していないという人まで収支報告書に載っていると報道。共同では、3人分37万円が指摘された。そして、30日午後になって読売新聞が、故人も含めて18人分659万円が判明したと報じた。
人数や額はどんどん大きくなり、今度は、鳩山代表が30日夕、自ら調査結果を発表し、90人分2177万8000円にまでなったのだ。
鳩山代表は、国会内で会見し、騒ぎについて陳謝した。しかし、自らは知らず、経理担当の公設秘書が独断でやっていたと釈明。秘書を解雇する一方、自らは代表を辞任する考えはないことを明らかにした。そして、虚偽記載の理由については、秘書の思いをこう代弁した。
「私への個人献金があまりに少ないので、それが分かったら大変だとの思いがあったのではないか」
献金については、企業からのヤミ献金など不正なものでないと主張。鳩山代表の個人資金を秘書が付け替えたという。
「犯罪として処罰するべきか判断のしようがない」
一方で、鳩山代表への個人献金は、国会議員の中では突出して多いというのだ。
毎日新聞の2009年7月1日付記事によると、98~07年の10年間で計5億9000万円もの個人献金があった。毎日では、鳩山代表が記載の動機として個人献金の少なさを挙げたことに対し、「説明に矛盾が生じている」と指摘している。
さらに、毎日によると、5万円以下で政治資金収支報告書に合計のみを記載する匿名献金が6割をも占めている。鳩山代表の調査は、05~08年の4年間の匿名でない個人献金に限るため、今後の調査次第では、虚偽記載の人数や額はさらに拡大する可能性がある。今後も説明責任が求められそうだ。
鳩山代表の弁護士は、秘書を政治資金規正法違反の罪で告発することも検討中と明かした。ところが、この個人献金問題、法で処罰できないかもしれないというのだ。
政治資金に詳しい名城大の郷原信郎教授は、「虚偽記載の違反行為であることは間違いない」としながらも、こう話す。
「企業献金の抜け道として、個人献金に偽装した、というなら分かりやすい政治資金規正法違反です。しかし、今回のは、鳩山さん本人から金を借り入れたとすれば、その動機や目的がよく分かりません。形式的な違反では、捜査に入るといっても、犯罪として処罰するべきか判断のしようがないでしょう」
匿名献金については、名前、住所などを記載しないため、違反には問えないという。