神社で結婚式を挙げる「神前式」が復活しつつある。新郎は紋服(もんぷく)姿、新婦は白無垢を着て綿帽子を被り、雅楽が演奏されるなか厳かに式が執り行われる。明治神宮の場合だと、秋まで土日は既に予約でいっぱい、という状況だ。日本に古くから伝わる習わしにあこがれる若い人が増えていることが背景にあるが、芸能人の間で神前式がブームになっていることも影響を与えていそうだ。
多い日は一日20組が式を挙げる
女優の真矢みきさん、沢尻エリカさん、お笑いタレント「オセロ」の松嶋尚美さん、モデルの神田うのさんなど、ここ数年、芸能人の挙式が目立つ明治神宮(東京都渋谷区)。同じ場所で式を挙げたいというカップルが増えている。
結婚式のピークは春と秋だ。準備があるので式の3か月より前に予約を入れるのが一般的だが、今から秋に向けて予約をしようにも、土日は既にいっぱいだ。明治神宮によると、土日希望の場合は早くても2010年の1月以降になる。
なんでもこの状態は09年3月から続いていて、多い日は朝から夕方まで20組が式を挙げ、次から次へとスタンバイしている状態なのだとか。
神田明神(千代田区)では年間400~500組のカップルが式を挙げている。この3年、申し込みは増えているが、他の行事もあるので年間500組以上は受けられないそうだ。9月は土日に若干空きがあるものの、10、11月は仏滅以外、埋まっている。本人さえよければ仏滅でも式は行うそうだ。
リクルートが毎年実施している「結婚トレンド調査」(08年)によると、首都圏でもっとも多かった挙式スタイルは「キリスト教式(教会式)」で64%。神前式は17.6%で、全体に占める割合は教会式ほど多くないが、04年8.2%、05年11.1%、06年14.9%と増えている。07年は12.4%と減っているものの、一時的なものと見られる。
リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の広報担当者は、こうみている。
「5年前から和婚ブームが始まりました。日本に古くから伝わる習わしを重んじる若い人が増えているようです。和装の人気が出ているのも1つの理由です。また、芸能人の影響もあるかもしれません。でも、結婚式は一生に一度のことなので家族の意向もあり、ブームだから選ぶということはないと思います」
神前式専門プランナーもいる
七五三、初詣、厄除けなど人生の節目に神社でお参りするように、神様に結婚のご報告をする。そのため普段からお世話になっている神社で式を挙げるのが一般的だ。
ウエディングプランナーのように神前式をお手伝いする、神前式専門プランナーもいる。ウエディングネットアカデミー(神奈川県横浜市)では、神社探し、神社の見学の付き添いから申し込みに至るまで請け負う。また、披露宴やパーティのセッティングも行う。式の前日に神社に挨拶に行き、当日は段取りを仕切ってくれるという頼もしい存在だ。
神前式プランナーがいなくても式を行うことは可能だが、慣れない式に勝手がわからず、あたふたしてしまうカップルもいるそうだ。
「式の当日に衣装の搬入、搬出、移動手段の確保などを自分たちでやらなければならず、感動に酔いしれるどころではないと思います。神前式後にホテルで披露宴を行う場合、ホテルのプランナーが手伝ってくれることはありますが、基本的にはホテルの外に出たらノータッチです」
というのは、代表の塚原育子さん。
マナーの問題もある。
「神前式は家と家の結びつきですので親族以外参加しないものですが、教会式と同じ感覚で式に臨む方がいらっしゃいます。友人を含め100人近くも集まって、ごった返していたのを見たこともあります。こちらがハラハラすることもありますよ」
挙式に限らず、神社ではいろんな儀式が執り行われている。神社にとって、すべての儀式が同じように大切なので、挙式が特別という位置づけではない。マナー違反をしないように注意しないといけないようだ。