家電とICT(情報通信技術)の融合が加速する中、米アップル社の「iPhone(アイフォーン)」の新モデル「3GS」が発売され、都内の販売店では「徹夜組」が出るほどの盛り上がりを見せた。iPhoneはゲームを動かすことも出来るのも強み。この後を追うかのように、ソニーも「電話機とゲーム機を融合させたもの」の開発を検討している、といった報道もされている。仮にこれが本当だとすれば、いわば「PSPケータイ」のようなものが登場する可能性もある。最近は存在感を失った感もあるソニー製品だが、巻き返しの可能性はあるのか。
「通信と電機、エンタテインメントを融合した新商品の開発」
ソニーのオーディオプレーヤー「ウォークマン」は2009年7月1日、発売30周年を迎える。「ウォークマン」は、機能を再生に絞ったということで世間の注目を集めた反面、ここ数年は、ソニーの「ヒット商品不在」が指摘されて久しい。そんな中、同社は09年4月1日、ハワード・ストリンガー会長が社長を兼務するなど体制を一新。その新体制で「通信と電機、エンタテインメントを融合した新商品の開発」を目指していると報道され、波紋を広げている。
日本経済新聞が09年6月27日に報じたもので、この記事によると、
「ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の新型携帯ゲーム機と、ソニー・エリクソンの携帯電話の機能を取り込んだ製品の開発」
が具体的に検討されているといい、7月にもプロジェクトチームが発足するとされている。
英ロイター通信も、この日経記事を紹介。記事では、ゲームメーカーがiPhone向けにソフトを供給するケースが相次いでおり、ソニーのPSPなどにとっては脅威になりつつあるという背景も紹介している。ソニーのゲーム機器をめぐっては、09年6月、新型PSP「PSP go」が11月に発売されることが発表されたばかりだ。ただ、こうした開発計画が実際に進んでいるとすれば、新製品はソニーの「総力」を結集した成果物とも言える存在となるだけに、注目を集めることは間違いない。
具体的な製品の計画は「未定」
では、この開発計画の真偽はどうなのだろうか。同社は2009年6月30日、7月1日付で、製品のネットワーク対応を進めるための部署「ネットワークモバイルセンター」を新設することを発表した。ソニーの広報センターは、日経の記事について、
「この辺のことを発表前に情報をつかんでお書きになったのでは」
と説明。新部署のトップには、鈴木国正・業務執行役員SVP(シニア・バイス・プレジデント)が就任。鈴木氏は、バイオ事業本部長を兼任しており、09年4月からの新体制を支える「四銃士」と呼ばれる4人の役員のうちのひとりだ。この4人のうち、鈴木氏と平井一夫SCE社長の2人が「ネットワークプロダクツ&サービスグループ」(NPSG)と呼ばれる組織の担当なのだが、この組織が担当する製品は、プレイステーション、PSPなどのゲーム機器や、バイオ、ウォークマンなどのモバイル機器。前出の「ネットワークモバイルセンター」はNPSGの下に作られた組織だということを考えると、日経が報じているような新製品が、この組織で開発される可能性もありそうだ。
もっとも、ソニーの広報センターでは、
「具体的な製品の計画といった、それ(組織改編)以上の事柄については未定」
といい、「あくまで未定」しながらも含みを残している。