金属の一種「ゲルマニウム」の作用によって、何らかの健康効果があるという科学的根拠はない、という見方を国民生活センターが打ち出した。「こりの緩和」や「血行の改善」を促すという触れ込みで、ゲルマニウムを使った健康商品は多い。販売中止や返品を検討するところも現れ、関連業界は衝撃を受けている。
アクセサリー以外も効果は期待できない?
ゲルマニウムのブレスレットやネックレスといったアクセサリーについて、消費者から「効果がない」「効果があるか疑問」といった相談が2004 年度からの5 年間で2309 件、国民生活センターに寄せられた。
同センター商品調査部が1万5000 円未満のゲルマニウムブレスレット12 銘柄をテストし、09年6月25日に結果を発表した。ゲルマニウムの含有率が0.1%以下の微量のものがほとんどで、まったく含まれていないものもあった。
また、対象商品の製造販売業者とインターネット通信販売業者を対象にアンケート調査を行ったが、ゲルマニウム自体の作用によって健康に対する何らかの効果を示すという明確な科学的根拠は示されなかった。また、独立行政法人科学技術振興機構の科学技術文献データベースでゲルマニウムについて検索したところ、科学的根拠を示す文献は確認できなかった、としている。
国民生活センター商品テスト部の担当者は、
「ゲルマニウムという物質に人体への効果を示す根拠がない限り、アクセサリー以外の商品についてもゲルマニウムによる効果は期待できない」
としている。
ただ、健康食品、化粧品といった体内に吸収されるタイプに用いられる有機ゲルマニウムについては触れていない。
「いつか行政指導があると思っていました」
「いつか行政指導があると思っていました」
と明かすのは、ゲルマニウムのブレスレットやネックレスを製造販売している業者。
「ブームになった5、6年前はシルバーに溶かしただけの商品で10万円というのも出回っていました。高い商品なので、お客さんは効く気がするんでしょう。売れていましたが、ゲルマニウムの粉自体には効果はありません」
この会社もゲルマニウムのネックレスを扱っているが、ゲルマニウムの効果はなく、配合したセラミックにより遠赤外線効果を得られることをお客や販売業者に説明しているという。それでも商品名にゲルマニウムと記載しているのは、その方が売れるからだそうだ。
ただし、ゲルマニウムブームの火付けになった「ゲルマニウム粒」(ゲルマニウムの純度が高い粒状のもので、先が尖ったタイプ)は正しく使えば「コリに即効性がある」と主張する。
「ゲルマニウム全部が効かないと誤解されては困る」
とも話している。
健康関連商品の通販サイトを運営するケンコーコムは、ゲルマニウム関連を100件ほど扱っている。ゲルマニウムを繊維に織り込んだブラジャーやショーツ、ストッキングというユニークな商品もある。
同社広報担当者は、
「メーカー側に薬事法上の違反がないかということを改めて確認しています。ゲルマニウム自体の健康効果に科学的な根拠がないという調査結果については、販売そのものをやめるということも含めて対応を検討しています」
としている。
購入者からの返品の要望があれば、対応するそうだ。
「Yahoo!ショッピング」でゲルマニウムと検索してみると、2万7408件ヒットする。ヤフー広報担当者は、
「行政指導があれば、対処する方針です」
と回答した。