日銀は2009年6月の金融経済月報で景気判断を2カ月連続で上方修正した。輸出や生産の持ち直しを受けたもので、企業の資金繰りなど金融環境の改善も指摘した。今後は金融危機対策で導入した資金繰り支援の解除の是非が焦点となるが、日銀は景気の下振れリスクも警戒しており、難しい判断を迫られそうだ。
春ごろから社債・CP市場に回復の動き
リーマンショック後の金融危機と景気後退が深刻化した09年1月、日銀は景気判断を「大幅に悪化」と下方修正。この判断を4月まで維持していたが、5月は「悪化を続けている」と「大幅」を削除し、6月は「下げ止まりつつある」とさらに判断を前進させた。
企業の資金繰りについても、日銀は08年末から年明けにかけて、企業が資金調達のために発行した社債やCP(コマーシャルペーパー)の買い取りを決定。市場の混乱で社債やCPの発行が激減し、大企業でも資金繰りに行き詰まりかねない事態が懸念されたためで、買い取り効果が徐々に浸透し、春ごろから社債・CP市場に回復の動きが出てきた。
景気と金融市場の改善が歩調を合わせて進んでいる格好で、最近はトヨタ自動車やソニー、NTTなどが相次いで大規模な社債を発行した。一方、日銀がCP買い取りを決める入札は3月以降、応募額が買い取り予定額を下回る「札割れ」が頻発し、6月5日の入札は応募額が初めてゼロになった。
日銀の社債・CPの買い取りは、発行企業が破綻すると、日銀が損失をかぶる仕組みで、「通貨の番人」としての信認が重視される中央銀行にとって、本来は「禁じ手」だった。金融危機のためにやむをえず繰り出したものだが、日銀の白川方明総裁は「経済環境が好転する中で、こうした措置を必要以上に続けると、金融市場に歪みが生じる」と懸念を示した。