市場が混乱すれば、投機マネーは原油にも流れる
2009年6月19日のWTIは、世界的な景気回復の楽観ムードが後退して、終値で1バレル69ドルと70ドルを割った。週明けの22日は66ドル、23日には69ドルと70ドルをはさんで推移している。どうも足踏み状態に入ったようだ。
原油先物を扱う東京工業品取引所(TOCOM)は、「たしかに原油は今年に入って上昇が目立ちます。しかし、WTIの取組高(売買の建て玉の数)をみても急激に増えていることはありません」と、投機マネーの流入に勢いがあるとは言い切れない。
前出の芥田氏は、「企業や個人が投資にまわせる資金が増えているわけではない」と話す。いま原油に投資する投資家は、「貯え資産」をバックボーンにしている。株式や債券、商品(コモディティ)と市場全体が右肩上がりにならないと、手元の投資に使える資金が増えず、勢い原油に投資できる資金も増えてこないためだ。
とはいえ、上昇の勢いを失ったかにみえる原油価格だが、商品先物の光陽ファイナンシャル・トレードの熊本宏氏は、「上昇トレンドは続いている。いまは高値の調整安に過ぎず、ガソリンの最大需要期の夏場までは上昇するのでは」とみている。
世界的な「ゼロ金利」水準で、だぶついた資金は原油をはじめ、金や穀物、株式、BRICsや資源国通貨などに流れている。「今後、財政悪化で長期金利が上昇(債券価格は下落)して、市場が混乱すれば、投機マネーは金などの安全な投資先に流れる」(熊本氏)。原油もその投資先となるので、「100ドル超え」の可能性は十分ということらしい。