朝日新聞夕刊の1面やテレビ欄に使われた紙が、「普段よりも白い」として、話題になっている。新聞社側は「広告企画のメッセージ性をより高めるため」と説明するが、広告収入が落ち込む中、業界からは「単価の落ち込みを食い止めるための苦肉の策なのでは」との声も聞こえてくる。
FMプレミアム紙と呼ばれる特別な用紙
6月23日の朝日新聞夕刊(左、東京本社4版)と読売新聞夕刊(右、東京本社4版)。朝日の方が「白い」のが一目瞭然だ
通常、新聞紙の色と言えば「グレー系」だというのが一般的だが、2009年6月23日の朝日新聞夕刊には、一番「外側」の紙、つまり1~2面、最終面の20面(テレビ欄)と19面(第1社会面)が印刷されている用紙が普段よりも白く、厚いものが使われている。
この日の紙面は、全ページにわたって食品関連の広告や広告枠のコラムが掲載され、1面のコラムには、「今、改めて考えたい『食』」という見出しで、広告企画の趣旨が説明されている。「白い紙」に掲載されている広告は、ロッテのガム「キシリトール」や、キリンビールの「一番搾り」など。特に「一番搾り」の広告は最終面の全12段中8段を占めており、女優の松嶋菜々子さんが黄金色のビールを手に笑顔を見せている。
朝日新聞社広報部によると、この「白くて厚い紙」は「FMプレミアム紙と呼ばれる特別な新聞用紙」だとのことで、やはり広告企画のために使用された様子だ。
「農林水産省が定める『食育月間』に合わせた広告特集『食の潮流2009』の企画・掲載にあたり、本企画のメッセージ性をより高めるためです」
なお、この「FMプレミアム紙」、朝日新聞の広告局が発行する媒体資料によると、「FMスクリーン」と呼ばれる印刷技法専用の用紙だとのことで、資料では
「製紙会社と共同開発した、通常の新聞用紙より上質なFMスクリーン専用の高白紙です。現在、広告センター版やパノラマワイド(編注: いずれも広告枠の種類)などの発行に使用していますが、FMスクリーンによる印刷の長所が最も効果的に発揮できる商品として、高い評価をいただいています」
とアピール。また、「FMスクリーン」については
「新聞業界では朝日新聞社が初めて導入し、鮮やかな色彩、リアルな表現力を持つ紙面が実現しました」
と説明されており、やはり「『白い紙』だと、発色などの面で広告の表現力が高くなる」と言うことが言えそうだ。
「掲載料金などはお答えできません」
もっとも、新聞広告は、広告業界の中でも、特に「冬の時代」。08年の新聞広告費(電通調べ)は8276億円で、前年比で12.5%も落ち込んでいる。「マスコミ4媒体(新聞、テレビ、ラジオ、雑誌)広告費」の下げ幅が同7.6%だということを踏まえても、マスコミのなかでも特に新聞広告が苦境に立たされていることが浮き彫りになる。
新聞広告をめぐっては、出稿数の減少もさることながら、広告当たりの単価も下落傾向にあるとされ、新聞業界関係者からは、
「『良い紙を使うから、定価で広告を出してくれ』という苦肉の策なのでは」
という、うがった見方も聞こえてくる。
もっとも、この点については、同社は、
「掲載料金など、お取引に関することはお答えできません」
と、「ノーコメント」の立場だ。
新聞広告をめぐっては、産経新聞東京本社が、通常の紙面を広告特設面で包み込む「ラッピング新聞」を開発し、01年の「新聞広告賞」(新聞社企画部門)を受賞するなど、形態についても様々な試みが行われている。