富山県でアニメを使った観光客招致プロジェクトが始まった。地元のテレビ局や県内のアニメ制作会社などが参加し、「泣けるアニメ」をテーマに富山県にちなんだ3本の短編アニメを制作。中国で放送したうえ、「YouTube」や「ニコニコ動画」にも配信した。こうしたプロジェクトの効果で外国人も含め観光客が増え、今後もアニメイベントを定期的に行う予定だ。
伝統芸能会館でアニメイベントも開催
富山県がアニメファンから注目されるきっかけになったのは、青春恋愛アニメ「true tears」。南砺市城端が舞台になっていて、制作したのは同市に本社があるピーエーワークス。テレビ放送が始まったのは2008年1月からで、富山では同4月から放送された。アニメには街の商店街や駅舎、公民館、神社、スーパーなどが登場。放送後間もなく、全国からアニメファンが「聖地巡礼」といわれる観光に訪れるようになった。ネットでは街を紹介するサイトが次々に作られていった。
南砺市では09年7月5日に、城端伝統芸能会館「じょうはな座」で同アニメのファンイベントを開催する。アニメの声優達のトークイベントやミニコンサート、ピーエーワークス作品の上映会が行われる予定だ。この会館はもともと地元の「伝統芸能」を披露するために作られたもの。それがなぜアニメイベントをするようになったのか。
同市観光課によると、伝統芸能の催しだけでは運営が困難になり、デジタルシアターとしてリニューアルしたという。
「アニメの人気で、若い方々を中心とした観光客が増えただけでなく、企業誘致の問い合わせも来るようになった。アニメイベントはこれから定期的に行われて行くことになると思う」
と話している。
アニメで、観光客が呼べることがわかり、先のピーエーワークスが参加するプロジェクト「富山観光アニメプロジェクト」が09年6月に本格始動した。狙いは外国人観光客だ。映像制作・プロモーション会社のファンワークスが主体となり、富山テレビや、地元のアニメ制作会社に呼び掛けて発足した。経済産業省の地域資源活用型新規産業創造事業の補助金を受け、2000万円で「泣かせる富山」をキーワードに、「立山連峰」「富山湾」「五箇山」の3ヶ所をアニメ化。富山テレビのドキュメンタリー制作チームが各地の実写映像と解説を付け、30分の番組に仕上げている。
アニメで観光客を呼ぼうという動きは他県にも広がりそう
同プロジェクトの狙いは富山県観光の活性化。特に海外から訪れる観光客を意識している。そのため、「YouTube」や「ニコニコ動画」にも配信。中国では遼寧電視代の衛星総合チャンネル(視聴人口6億人)を通じて中国全土で放映した。ちなみに、「泣かせる富山」というのは、富山に来て感動して欲しい、ということなのだそうだ。今回のアニメプロジェクトについてファンワークスは、
「海外で日本のアニメ人気は高く、観光客へのアピールにアニメは有効な手段。また、アニメ制作などの優秀なクリエイターは地方にも多く、そうした方々と組むことで地元をよりPRできる作品が生まれると判断した」
と話している。アニメで観光客を呼ぼうという県は今後、他県にも広がっていくのではないか、と同社では予想している。