「細うで繁盛記」の伊豆・大東館が経営破たん

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   1970年初めに日本テレビ系列で放送されたドラマ「細うで繁盛記」のモデルとなった伊豆・熱川の温泉旅館「大東館」が経営破たんした。負債総額は約45億円。景気低迷の影響で宿泊客が減少、借入金負担も重く、資金繰りに行き詰まった。

年商はピーク時の半分に

   帝国データバンクによると、大東館は2009年6月17日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日付で受理された。すでに「大東館」のスポンサーには、湯ヶ島温泉の眠雲亭落合(旧落合楼)などを運営するパシフィックアイランディアンリゾートが選定されている。

   大東館は1940年の開業。68年には別館の「熱川ロイヤルホテル」がオープン。新珠三千代さん主演のTVドラマ「細うで繁盛記」のモデルとなり、その知名度の上昇とともに84年には約14億3400万円の年商を上げた。

   ところが、1986年に旧館「山水」の火災で24人が焼死するなどの惨事があり、遺族への補償や類焼したホテルへの賠償などを負い、別館の「熱川ロイヤルホテル」も一部が焼けて休業を余儀なくされた。その後、イメージの払拭を狙って全面建て替えを実施。94年2月にホテル名を「ホテルセタスロイヤル」に変更して営業を再開していた。

   しかし、長期にわたる景気低迷の影響で宿泊客が減少、建て替えにかかった資金の借り入れ負担で近年は年商7億円程度とピーク時の半分に落ち込むなど、赤字続きだった。また、全面建て替え時に立ち上げた会員制リゾートクラブの運営がうまくいかず、退会希望者への預託金の償還債務にも追われていた。08年秋からは借入金の返済も滞り、従業員への給料も遅配が続いていて、地元でも不安視されていた。

「おみゃーにやる飯はにゃーずら」

   伊豆・熱川温泉を舞台にした「細うで繁盛記」は1970年1月から約1年3か月放送され、最高視聴率38.0%を記録した人気ドラマ。原作は花登筺氏の「銭の花」。主役の加代を演じる新珠三千代さんの、「銭の花の色は清らかに白い。だが、つぼみは血のにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」の詩の朗読ではじまる。

   ドラマは主人公の加代が、客が来ない旅館「山水館」を切り盛りし、周囲に嫌がらせにもめげずに、やがて大きな旅館に育てるストーリー。

   なかでも、加代の義妹・正子に扮する冨士眞奈美さんの牛乳瓶の底のようなメガネ姿と憎らしいセリフ、「犬にやる飯はあっても、おみゃーにやる飯はにゃーずら」は大流行した。40歳後半以降なら、覚えている人も少なくないはずだ。

   ドラマでは、戦後の復興で温泉客が増えはじめた商機を、加代は新しいアイデアと温かい心づかいでコツコツとお客を増やし、やがて山水館は熱川温泉で有数の大旅館に成長する。

   建て替えたホテルセタスロイヤルのロビーの一角には、「細うで繁盛記ゆかりのホテル」とコーナーが設けられているが、さすがに40年近く経てばドラマの宣伝効果はなくなる。 ちなみに、「細うで繁盛記」は2006年、07年にリメイク版が放送されたが、視聴率はさっぱりだった。

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