「おみゃーにやる飯はにゃーずら」
伊豆・熱川温泉を舞台にした「細うで繁盛記」は1970年1月から約1年3か月放送され、最高視聴率38.0%を記録した人気ドラマ。原作は花登筺氏の「銭の花」。主役の加代を演じる新珠三千代さんの、「銭の花の色は清らかに白い。だが、つぼみは血のにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」の詩の朗読ではじまる。
ドラマは主人公の加代が、客が来ない旅館「山水館」を切り盛りし、周囲に嫌がらせにもめげずに、やがて大きな旅館に育てるストーリー。
なかでも、加代の義妹・正子に扮する冨士眞奈美さんの牛乳瓶の底のようなメガネ姿と憎らしいセリフ、「犬にやる飯はあっても、おみゃーにやる飯はにゃーずら」は大流行した。40歳後半以降なら、覚えている人も少なくないはずだ。
ドラマでは、戦後の復興で温泉客が増えはじめた商機を、加代は新しいアイデアと温かい心づかいでコツコツとお客を増やし、やがて山水館は熱川温泉で有数の大旅館に成長する。
建て替えたホテルセタスロイヤルのロビーの一角には、「細うで繁盛記ゆかりのホテル」とコーナーが設けられているが、さすがに40年近く経てばドラマの宣伝効果はなくなる。 ちなみに、「細うで繁盛記」は2006年、07年にリメイク版が放送されたが、視聴率はさっぱりだった。