発症割合、地方は東京の3~4倍も
さらに、対策の遅れが、発症の増加をも招いているというのだ。日本HIV陽性者ネットワークの高久陽介事務局長の話。
「感染・発症全体のうち発症の割合は、東京では十数%です。しかし、地方は、30~40%ぐらいのところも結構あるんです。発症して初めて分かる人も多く、同性愛者の人口が多くて啓発が活発な大都市圏とは、明らかに格差が出ています。発症すると、肺炎や脳症を起こして3か月ぐらい入院することも多いんです。今の予算では、東京、大阪ぐらいで手一杯。もう少し手を打たないといけません」
エイズに詳しい名古屋市立大の市川誠一教授は、同性愛者向けの啓発そのものも不十分だったことを指摘する。
「エイズ予防のコンドームは、異性間の着用ばかりが強調され、同性愛者には十分に情報が入っていません。啓発が積極的でなく、結果的に対策が遅れてしまったということです。このため、同性愛者は、気づかなかったり、相談しにくかったりして検査せず、感染が拡大してしまったのかもしれません。欧米では、啓発に進んで取り組んだ結果、1990年代後半には感染・発症者を減らしています。日本でも、もっと早く取り組んでいれば、今のような感染の広がりを避けられたのではないでしょうか」
今後については、市川教授は、「エイズがここ4、5年のうちに地方などでさらに増える可能性があり、その伸びは、曲線のある上向きカーブになっています。行政の広報のほかに、当事者に届くようなNGOのメッセージも活用して、予防を地道に呼びかけるしかないでしょう」と話している。