「御殿場事件」はえん罪か 長野智子のドキュメンタリーに注目

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   長野智子キャスターがテレビ朝日系で7年間も追い続けている報道ドキュメンタリー番組に注目が集まっている。当時16歳の少女が元同級生ら10人の少年に暴行されたとされる事件。犯行日時について少女の供述が一旦変わっているにもかかわらず、裁判は10人を有罪にした。これはえん罪なのではないか、という内容だ。視聴者の反響が大きく、その続編が2009年6月29日に放送されることが決まった。

「刑務所に送ってやる。一生出てくるな!」

   番組は「報道発ドキュメンタリ宣言」。09年6月1日には「それでも僕らはやってない~親と子の闘い3000日~」が放送されると、番組ホームページには2万以上ものアクセスが集中した。テレビ朝日系では長野キャスターが7年前から「ザ・スクープ」「スーパーモーニング」で取材・報道してきた。

   01年9月16日の午後8時頃の静岡県御殿場。16歳の少女が中学生の元同級生に公園に連れて行かれ、10人の少年に1時間以上にわたりわいせつな行為を受けたと供述した。しかし、目撃者も物的証拠もない。少年の家族らが奔走し、事件が起きたとされる当日のアリバイを立証し、無実を主張。少女も当日、出会い系サイトで知り合った男性と会っていたことを認め、法廷で、

「事実と違うことを言ってしまい、みんなに迷惑を掛けてしまった」

と謝罪した。これで一件落着と思われたが、少女は、乱暴されたのは事実で、暴行されたのは9月9日だった、と主張を変えた。検察は犯行日を変更する訴因変更請求を行い裁判所はそれを認めた。

   この事件の立証の根拠になっているのは少年達の自白だけだ。少年たちは犯行を認めたが、それは取り調べで脅されたり、髪の毛を引っ張られたり、足を蹴られるなどの暴行を受けたからで、長野キャスターのインタビューに対し、

「お前のようなヤツは一生刑務所に送ってやる。一生出てくるな!」
「否認を続けると裁判になり金がかかるぞ」

などと執拗な取り調べが続き、身に覚えのないことだったが罪を認めねばならなかった、と答えている。

   新たな犯行日となった9月9日だが、この日は雨と強い風が吹いており、野外で犯行に及ぶのは難しいうえ、少女の服には雨が付いていなかった、などと裁判で主張したが認められず、07年8月22日に有罪判決が出た。最高裁は09年4月に上告を棄却。さらに、元少年の処分取り消しに対して、静岡家裁沼津支部は被害女性の供述は十分信用できるとし、09年6月5日、申し立てを棄却した。

取り調べ室の全面可視化を訴える

   この番組を見た人達はネットの掲示板やブログなどで、

「警察と裁判所の腐敗。供述のみで逮捕する捏造警察と女子高生に加担する裁判所。えん罪事件はここまできた!」

などと書く人が多い。一方で、

「最初からえん罪ありきで番組を作っているようにしか見えない」

と批判する人もいる。

   長野キャスターは自身のブログでこの事件を何度も記事にしていて、09年6月8日には、これまで取材してきた、えん罪やえん罪が疑われる事件の中で「御殿場事件」を筆頭に置いている。えん罪が確定的な足利事件の菅家利和さんの話を聞くと「デジャブ感に襲われる」とし、

「自白の強要であるとか、自白偏重主義の裁判とか。菅家さんの話す内容と、他のえん罪事件で見聞きすることがほとんと同じなんですね」

   暴力を振るう、怒鳴るなどを執拗に行った結果、容疑者はウソの自白をしてしまう。こうした捜査手法がマニュアル化されているとすれば、取り調べ室の全面可視化以外にえん罪の犠牲者を減らすことは不可能だ、と長野キャスターは訴えている。

姉妹サイト