苦戦が続く外食産業に、宅配事業を実験的に始めたり、本格的に参入したりする動きが出てきた。しかし、導入店が限られている会社も少なくない。不況下では食材を買って家で食べる「内食」が広がっており、それに乗り遅れまい、という窮余の一策かもしれない。
冷凍総菜の宅配でニーズ掘り起こす
すかいらーくはファミリーレストラン「ガスト」の116店で、冷凍総菜の宅配を2009年6月下旬から本格的に始める。
扱うのは全部で19品。「チーズハンバーグ」「ガーリックチキン」といった店で人気のある一品料理が9品。価格は390~590円。18品目の食材を使った「ヘルシーパレット」が5品、アンチエイジングの食材を使った「美食パレット」が5品。いずれも690円だが、ライスはつかない。調理は電子レンジであたためるだけだ。
同社はこれまでも店で出しているメニューのおよそ3分の1を宅配していて、年間の売上高が100億円を超える。しかし、注文が舞い込むのは昼と夜でレストランのピーク時と重なり、効率的に作業ができないなどの理由で「売上げは頭打ちだった」(同社)。
その点、冷凍なら店は調理の負荷がかからない。また、6か月間保存できるので、単身者や高齢者がまとめて頼むことができ、新たなニーズを掘り起こせる、というわけだ。
広報担当者は、
「店が駅から離れていると、車のないお客さまには来ていただけませんでした。また、お年寄りや、小さい子どもがいる家庭にも、宅配のニーズがあると思います。順調にいけば、全700店舗に広げていきたいと思います」
と話している。
カレーハウス「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋も、宅配事業を強化する。2010年5月までにカレーの宅配導入店舗を625店(09年5月末時点)から690店に増やす。同社によると、08年6月から09年2月の宅配事業の売上高が前年同期比2%増の54億円と好調だった。
「まずはやってみようということで始めた」
定食屋「大戸屋ごはん処」と「大戸屋キッチン」を展開する大戸屋は、宅配サービスを08年秋に始めた。ただし、実施しているのは09年6月現在で2店舗だ。
経営企画部の担当者は、「少子高齢化で宅配のニーズがあるので、まずはやってみようということで始めたが、実験段階だ」と説明する。
不況下で消費者は外食を控えている。日本フードサービス協会によると、ファーストフード店を除く外食産業の売上高は09年1月以降、4か月連続で前年を下回っている。
壱番屋は既存店売上げ高が09年3月は対前年比5.4%減、4月同比7.6%減、5月同比6.5%減。大戸屋も既存店売上げ高が09年4月は対前年比1.1%減、5月が同比2.7%減だった。
相次いで外食産業が宅配事業に乗り出しているのは、本業のレストランが苦戦しているからとも言えそうだ。
大戸屋経営企画部の担当者は、こう話している。
「5年以内に全店で宅配をできたらという考えはあるが、事業を拡大するとなれば、バイクやオペレーションシステムにかかる費用を捻出しなければなりません。また、メニューについても、レストランと同じ価格設定で採算が取れるのかという点も詰めていかなければなりません」
課題は山積みだ。