NHKの大型企画「シリーズ・JAPANデビュー」をめぐる波紋が拡大している。1859年の横浜開港から、1945年までの日本の歩みを振り返るという趣旨の大型番組なのだが、シリーズ開始直後から「自虐史観に基づいている」「インタビューの編集が恣意的だ」といった声が続出。「NHKの大罪」と題して新聞1ページを丸々使った意見広告が掲載されたり、全国で抗議活動が行われたりもしている。これを受けて、NHKはウェブサイト上に説明文を掲載したが、「番組に問題はない」とする内容で、批判は収まりそうにない。
「台湾人男性から抗議を受けている事実はない」
批判を浴びているのは、NHKが2009年4月5日に放送した、NHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー 第1回 アジアの『一等国』」。日本にとって初めての植民地である台湾を、どのように統治したかを描いたものだ。
その中で、台湾の先住民族を博覧会で「展示」したことを「人間動物園」として紹介し、教育勅語を暗唱してみせる台湾人男性の姿も登場。さらに、台湾人を日本式に教育する「皇民化教育」についても触れ、
「親日的とも言われる台湾に、今も残る日本統治の深い傷」
というナレーションも入った。
この内容に対して、「偏向している」「自虐史観だ」との批判が相次いでいるのだ。
「週刊新潮」が、4月23日号で「歴史歪曲と『台湾人』も激怒した NHK『超偏向番組』」という特集を組んだほか、5月18日の産経新聞(東京本社発行最終版)には、丸々1ページを使った意見広告が登場。
「NHKの大罪」
「NHKは日台友好関係を破壊するのか?私たちはNHKスペシャル『JAPANデビュー』の『やらせ』取材、歪曲取材、印象操作編集の偏向歴史番組の制作と放送に抗議します」
といった文字がおどった。
これまでNHK側は、記者会見や国会議員からの問い合わせに対して、「内容に問題ない」との答えを繰り返してきたが、6月17日になって、番組制作の経緯を説明する文書をウェブサイトに発表した。A4で6ぺージにもわたるものだ。
文書を発表した経緯について、日向英実放送総局長は会見の場で
「これまでも個別の問い合わせに対し丁寧に対応してきたが、視聴者の皆さまにも説明すべきと考えた」
「特定の意図や歴史観に基づいて作っているのではないことをご理解いただきたい」
などと説明。「特定部分を切り取った」などと批判されているインタビューについては、
「台湾の方々へのインタビューについて、不適切な編集はありません。また取材や制作過程においても問題はありません」
とした上で、インタビューを受けた2人の台湾人男性から抗議を受けている事実はない、などとした。総じて、「番組に問題はない」との主張が繰り返されている。
インタビューされた本人から抗議文?
これに対して、前出の広告の事務局を担当しているCS放送局「日本文化チャンネル『桜』」の水島総社長は、
「この文書が公開されたことで、NHKの主張が全部ウソだったことが分かった。非常にタイムリーで有り難い。実は、この問題をめぐる、3回目の台湾取材から戻ってきたばかりなんです」
と息巻く。
「NHKは『抗議は受けていない』という回答を繰り返していますが、実はメチャクチャに怒っています。NHKにインタビューされたご本人から、捺印された抗議文を預かっています。『日本に来て、抗議してもいい』ともおっしゃっています。さらに、『人間動物園』で展示された青年の遺族が、当時の写真を見て『悲しい』と話している場面がありますが、本人に取材したところ、これは『懐かしい』という意味だと言うことが分かったんです。つまり、『お父さんが懐かしい』という意味です。捏造どころではありません」
水島社長によると、6月19日には、関係資料を揃えて国会議員とともに総務省を訪ね、同省の見解を質すほか、6月25日には集団訴訟を起こす予定で、原告の数はすでに3050人に達しているという。
水島社長は、
「これらの事実は『チャンネル桜』でも続々と放送していく予定です。NHKの会長が、この事実を知ったら、顔を青くするのではないでしょうか」
と話している。
なお、今回問題になっているシリーズは、すでに3回放送されており、第4回は6月28日放送予定だ。タイトルは「軍事強国(仮)」だ。