ブランド品が割安で手に入ると人気の「アウトレット」業界で、大型店の出店、増設が相次いでいる。御殿場のアウトレットが有名なチェルシージャパンは8店舗、オープン時に大渋滞を巻き起こして話題になった埼玉・入間に店を持つ三井不動産は10店舗を構えることになる。ところで、在庫品や傷のあるB級品を売っているアウトレット店が、続々と増えている理由は何なのか。
国内アウトレットに初出店のブランドも登場
三菱地所の子会社、チェルシージャパンは茨城県阿見町に同社8店舗目となる「あみプレミアム・アウトレット」を2009年7月9日にオープンする。
開業時のテナント数としては最大の104店が入る。そのうち7店が国内アウトレットに初出店のブランドだ。メンズファッション「ランバン オンブルー」、トレンド感があるガールズファッション「ダブルクローゼット」、イタリア伝統の正統派テーラー「パルジレリ」など。
初年度売上げは140億円を目指している。
ブランド品が正規の店より割安に手に入るアウトレットは、幅広い年代に人気だ。
チェルシージャパンのマーケティング部担当者は、
「既存店の来場客、売上げともに右肩上がりです。なかでも好調なのは御殿場店で、客数はオープン当時よりも400万人増えています」
と話している。
御殿場店で買い物をした客は初年度(2000年度)が570万人で、06年度、07年度が880万人ずつ、08年度が980万人と上り調子だ。このところの不況の影響も、それほど受けていない様子だ。
右肩上がりの理由は、同社のビジネスモデルにありそうだ。
オープン時のテナントは80~90店程度にして、数年以内に大幅に増やしていく。御殿場は2000年7月のオープン時は90店舗ほどだったが、03年7月に73店、08年3月に43店を増設。神戸三田店も09年冬に約70店舗増設することが決まっていて、ほとんどの店で増設している。
アウトレットは郊外にあることから、行くには交通費と時間がかかる。わざわざ来るのだからお客に飽きられない仕掛けが必要で、前に来た時よりもブランドが増えたというのは絶好の客引きになる。
運営側にとってもメリットがある。初めからたくさんのテナントを抱えるとリスクがあり、体力もいる。また、「郊外の店にお客が来るのか」と、入店を断っていたブランドも、実績を出しての増設なら話がまとまりやすくなる。
アウトレットでしか手に入らない限定品を置く
全国的にもアウトレットモールは続々、増えている。
「三井アウトレットパーク」を埼玉県入間市など全国に8店舗展開する三井不動産は2010年、北海道と滋賀県に出店する。
2010年春に9店舗目となる「三井アウトレットパーク 札幌北広島」(北海道北広島市)をオープンし、約5万2900平方メートルの敷地に約120のテナントが入る。
同年夏には、「三井アウトレットパーク 滋賀竜王」(滋賀県蒲生郡竜王町)をオープンする。約18万平方メートルの広大な敷地に、約150店入る予定だ。
アウトレットで扱っているのは、売れ残ってシーズンを外れた在庫品がほとんどで、傷のあるB級品もある。不況下で衣料品が正規の値段で売れにくくなっているとは言え、出店、増設するほど、在庫が増えているのだろうか。
アウトレットの発祥の地はアメリカで、日本には1980年代頃に入ってきた。英語で「出口」や「はけ口」という意味で、傷があり正規店で出せなくなったものを集めて売った。
ところが、日本ではこれら2つ以外に、ブランドがアウトレット用に出している商品も扱っている。
前出のチェルシージャパンの担当者は、こう説明する。
「日本のお客さまはアメリカ人に比べて傷物を気にするので、B級品といっても傷が目立たないものか、雑貨のように1度使えば傷ができるようなものが多いです。扱っているなかで一番多いのは、ワンシーズン前に売れ残った在庫品ですが、それだけでは新しさが出ません。そこでアウトレットでしか手に入らない限定品を置いているんです。すべてブランドから直接仕入れているので、信頼できると好評です」
本来、さほど増えるはずのないアウトレット店が続々と増えている謎は、そういうことらしい。