「つむじ風」とは、小規模な渦を巻いた風
ところで、なぜ、オタマジャクシが落下するのか――。有力な仮説は3つある。「イタズラ説」「鳥説」「風説」だ。イタズラ説に関しては報道によると、発見当時には人の気配がなかったことが報告されており、この可能性は低そうだ。
また、サギや鵜がオタマジャクシを吐き出したのではないか、という「鳥説」はどうだろう。日本鳥類保護連盟は、「鳥がカラスなどに襲われ、何かの拍子に胃の中にためていたオタマジャクシをはき出してしまう可能性は、ないとは言えない」と指摘する。鳥類は現在、繁殖期を迎えており、ヒナのために餌を持ち帰る行動が頻繁に行われている。
「ただし、だいたいは一度飲み込んだものをはき出して、ヒナに与えています。だから、万が一はき出した場合、半分消化されたどろっとした状態になると思うのです」
そこで、有力なのは「風説」となる。風がオタマジャクシを巻き上げ、たたきつける可能性だ。金沢工業大学の饗庭貢教授は、最初に落下が報告された七尾市の中島市民センターの周辺の状況や地形、当日の気象状況を確認したところ、
「『つむじ風』が発生したことで、付近の水田からオタマジャクシが巻き上げられた可能性が高い」
と指摘する。「つむじ風」とは、小規模な渦を巻いた風のことで、気象台でも観測できないという。饗庭教授は中島市民センターの場合、次のような状況で発生したと推測する。
――太陽が駐車場のアスファルト地面を熱し、建物の屋上にはエアコンの室外機が設置されていたことから上昇気流が発生しやすい状況だった。くわえて、水平方向からの風が建物にぶつかって、渦をまいた。その際、付近の水田のオタマジャクシを巻き上げた。しかも、水田では日中、水を止めており、オタマジャクシも巻き上げられやすい状況だったようだ。その後、風が凪いだとき、行き場を失ったオタマジャクシが落下した、というわけだ。
饗庭教授によると、全国で起きている落下現象も、同様の仕組みで説明できると見ている。もっとも、こうした状況は以前にもあったはずだが、ここ最近で発見例が相次いでいるのは、「報道で(オタマジャクシを)気に掛ける人が増えたのでは」とも話している。