主要な生命保険13社の2009年3月期決算は、金融危機に伴う株価急落が響き、三井生命保険や朝日生命保険など5社が最終(当期)損益で赤字に陥った。各社は準備金の取り崩しや増資、無配・減配など手を尽くして体力維持に必死だが、景気悪化で家計が保険料の切り詰めに走るなど経営環境は厳しく、再編含みの展開も予想される。
保有する有価証券の含み益が急減
最終赤字だったのは、ほかにT&Dホールディングス(太陽生命保険と大同生命保険の持ち株会社)、経営再建中の米AIG系のアリコジャパン、アクサ生命保険。赤字が最大だったのはアリコの2828億円だが、三井生命は1798億円、朝日生命も1841億円と大幅で、ともに無配を余儀なくされた。
保有する有価証券の含み益も13社合算で約9000億円と08年3月期の10分の1に急減した。有価証券含み益は生保の経営体力の裏付けだが、含み益激減で財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率も12社が08年3月期より悪化した。業界でも低い三井生命は602%、朝日生命は583%。健全基準の200%は上回るが、日本生命保険の904%などと比べると、大きく見劣りする。
金融危機が深刻化した08年末以降、三井生命は住友生命保険など三井住友グループの金融3社に総額600億円の増資を仰ぎ、朝日生命も350億円の基金増額に踏み切った。また、三井生命は多額の損失を出した変額年金からの撤退を決め、朝日生命はJR東京駅前の本社ビルを売却した。
三井生命、朝日生命はどうなる
ただ、景気低迷、金融不安が長期化し、運用環境が改善しないと、増資やリストラなどの対応も限界に達する。世界的な超低金利政策もしばらく続きそうで、生保経営の重荷となる逆ざや(契約者に約束した利回りが運用利回りを上回ることで生じる損失)がさらに膨らみかねないのも不安材料だ。
三井生命は住友生命とインターネット販売の商品を開発する共同出資会社の設立を決めた。三井生命は住友生命から資金支援のほか副社長も派遣してもらっており、関係が一段と深まる。相手の住友生命は「合併は全く考えていない」(役員)と否定するが、「将来的な統合の布石」との見方は根強い。
朝日生命も経営危機に陥った2000年代前半、東京海上ホールディングスとの統合を目指しながら、最終的に挫折した経緯がある。09年3月に発表した経営再建のための中期経営計画では、米保険大手メットライフと提携して保険料の安い商品を電話で直接販売する事業への参入を表明した。朝日生命は「あくまで単独再建」と強調するが、さまざまな再編観測が飛び交っている。