自社サイトを使って、おもしろいプロモーションを仕掛ける企業が目立ってきた。不況下で広告費を減らしている分、自分たちであの手、この手で工夫を凝らしている。中でもウエブの活用がうまいのは、カジュアル衣料品店のユニクロだ。アクセス数が2億PVと大人気のブログパーツ「UNIQLOCK」に続いて、特設サイトで公開しているカレンダー「UNIQLO CALENDAR」が話題になっている。
「新感覚カレンダー」、ブログパーツとしても
ユニクロは自ら、「UNIQLO CALENDAR」は新感覚なカレンダー、という。2009年6月10日に公開した。
東京・銀座、原宿、東京タワー、東京湾、葛西臨海公園、横浜、京都、神戸港、静岡祭り、石垣島といった7都府県、32カ所の映像が音楽に合せて流れる。
ティルト、シフトレンズという特殊なレンズを用いて撮影しているので、実際の風景とは異なり、ミニチュアのおもちゃのように見える。映像は30倍に早送りされていて、人や車、船、電車、観覧車があっという間に動き、「見ていて飽きない」「センスがいい」と評判だ。アクセス数は公表されていないが、広報担当者は「反響がいいです」という。
10秒前後で風景が切り替わる。また、映像部分をクリックすると、ユニクロの商品でできたモザイク画が現れるという仕掛けだ。
ブログパーツとしても使える。郵便番号を入力すると地域の天気が表示され、実用性もある。今後はスクリーンセイバーも登場する予定。
ユニクロといえば、ブログパーツ「UNIQLOCK(ユニクロック)」も好評だ。
秒刻みで時刻が表示され、その合間に女性たちの不思議なダンスが映し出されるというもの。07年6月に公開され、09年6月現在でブログパーツの利用件数は93カ国、7万200で、アクセス数は214か国、2億9500万PVにのぼる。
ウエブの活用に力を入れている理由について、広報担当者は、
「ユニクロ商品のコンセプトはベーシックでいつでもどこでもその人らしく着られること。一方でウエブは国境を越え、自分らしく活用できるツールで、2つのコンセプトが合致するからです」
と説明している。
「バイラルCM」とは何者だ
テレビCMやマス媒体に比べて制限が少なく、企業がやりたいようにできるのも魅力のようだ。結果としておもしろい作品も多い。
ナイキジャパンは秋葉原を舞台に、戦闘もののヒーローのようなコスプレをした5人組「Akibaman(アキバマン)」が登場する動画を投稿サイト「YouTube」で公開したところ、国内外で話題を呼んだ。
オンラインサービス「NIKEiD」のプロモーションで06年に行ったもの。いまだに人気があり、09年6月現在での閲覧回数は1400万回を超えている。
企業が個人ブログやSNSで話題になることを狙い、動画サイトに投稿した広告は「バイラルCM」と呼ばれている。これは、ブログなどネット上のクチコミによって「ウィルスのように」(VIRAL)感染し、広がっていくCMのこと。
ユニリーバのヘアケア、ボディケア用品「Dove(ダヴ)」のバイラルCM「Evolution」も人気だ。
すっぴんの金髪の女性が登場し、メーキャップをして画像修正を加え、最終的にはビルボードを飾るモデルに変身するというストーリーを早送りで見せる。
06年に公開し、1か月で閲覧回数は170万回以上、09年6月現在で1500万回に迫る勢いだ。
自社サイトを使ったプロモーションは今や、高級ブランドにも広がっている。
仏高級ブランド「クリスチャン・ディオール」は、アイコンバッグ「レディ ディオール」のプロモーションで、ショートムービー「The Lady Noire Affair」を09年5月20日から特設サイト(http://www.ladydior.com/thefilm/)で公開している。
アカデミー賞映画作品「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」のオリヴィエ・ダアン監督と同作で主演を演じた女優マリオン・コティヤールがタッグを組み、パリの街を舞台にサスペンスを展開する。アフルレッド・ヒッチコック監督の作品に刺激されたというだけあって、映画好きな人も楽しめると好評だ。