経済不況が続く中、高級ホテルの値引き競争が過熱している。海外からの客足が遠のき、日本人のサイフのヒモも硬い。そのせいで、インターネットの宿泊予約サイトでは、驚くほど安い宿泊料金が提示されている。
ホテルの客室稼動率「減少傾向」
ヨヤキュードットコム(yoyaQ.com)
宿泊予約サイト「ヨヤキュードットコム(yoyaQ.com)」では、「高級ホテル」を「最大80%OFF」で提供すると掲げている。外資系の高級ホテルもある。コートヤード・バイ・マリオット東京銀座ホテルのツイン料金3万5050円が1万4800円(2人1室)と57%割引、シェラトン都ホテル東京のツイン料金3万4650円も1万円(2人1室)で71%割引と、大幅な値引きを敢行している。
他でも「じゃらんnet」では、高級ホテルの「スイートルーム」でさえ、最大で正規料金の「半額」となるプランが打ち出されている。「高級ホテル・旅館、スイートルーム半額」のページを東京都で検索すると、港区のザ・プリンス パークタワー東京のガーデンスイートDルームは正規料金11万5000円のところ5万7000円(2人1室)、ウェスティンホテル東京・スイートダブルルームも正規17万3250円が8万円(2人1室)と破格の値付けだ。
日本ホテル協会によると、京浜地区全体のホテル客室稼働率は、06年の78.6%から、07年が77.0%、08年が73.3%と低下傾向。だが、協会の担当者は、ネットでの値引きプランを、あくまで正規販売に向けた一時手段であると強調する。
「お試し価格のようなもの。刺激的な宿泊プランは潜在ニーズを掘り起こすための先行投資だったり、PRの一環だったりする。各ホテル、価格とブランド力を維持するため、苦心して工夫・努力をしている」
安いからといってサービスの質は下がらない
ただ、「ヨヤキュードットコム」を運営するカカクコムの担当者によると、同サイト内での宿泊料金「平均単価」は値下がりが進んでいる。08年までは1万8000円後半で推移していたが、09年1月に1万5000円を割り、その後2、4、5月と1万5000円割れが続いているという。以前と比較し、料金が2割近く安くなっている計算だ。
それに対し予約件数は、1年前と比較して「倍以上」の伸びを示しているという。同じ担当者は、
「以前より価格的に魅力のある宿泊プランが確実に増えている。安いからといってサービスの質が下がるわけではないので、そうしたプランの成約率は非常に高いですね」
と話す。また、「メルマガで紹介したお得なプランはすぐに埋まってしまう」と、ユーザーも価格に敏感な反応を示しているそうだ。こうした安価なプランが続々と出ている要因については、
「訪日外国人の減少や、日本人も公私ともにサイフのヒモが硬くなっているなど、不況の影響も複合的に出ている。運営側でも『以前はこんな良い宿泊プランがこの価格で出ていなかったよね』と驚くこともあります」
と見る。今後の料金についても、
「夏休みなど行楽シーズン以外は急激に上がるとは考えづらい。ほぼ、現状で推移するのではないか」
と見通しを語っている。