損害保険大手6社の2009年3月期決算は、金融危機による多額の損失と新車販売の不振が響き、初めて全社がそろって経常赤字に転落した。危機感を背景に各社は相次いで経営統合に踏み切り、来春には「メガ損保」時代を迎えるが、どのグループが勝ち残れるのか。
苦境を打開するため、各社は経営統合を決断
経常赤字に陥ったのは、東京海上ホールディングス(HD)が1986年3月期の集計開始以来、三井住友海上グループHDが2001年のグループ発足以来、それぞれ初めて。経常赤字が最大だったのは損害保険ジャパンの1440億円。金融危機で暴落した証券化商品などの元利払いを保証した「金融保証保険」で大幅な損失を計上した。
売上高にあたる正味収入保険料も全社が減収だった。主力の自動車保険は近年、少子・高齢化や若者の車離れでじりじりと減っていたが、急速な景気後退による新車販売の激減が追い打ちをかけた。世界的不況で貿易も冷え込んだため、海上保険も低迷した。「本業も投資も全くいいところがなかった。最悪の決算だった」と大手損保幹部はこぼした。
苦境を打開するため、各社が決断したのが経営統合。三井住友海上とあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社、損保ジャパン、日本興亜損害保険の2社がそれぞれ2010年4月に統合し、首位に君臨してきた東京海上と競い合う「3メガ」時代を迎える。
国内市場が先細り傾向を強める中、規模を拡大し、経営効率化を進めて、余力を海外などの成長分野に振り向け、活路を見出そうという戦略だ。今回の決算を分析すると、3メガの実力が透けて見えてくる。
利益面では優位に立つ東京海上
まず、規模を示す正味収入保険料の合計で比べると、「三井住友海上・あいおい・ニッセイ同和」の3社連合が2兆5910億円、東京海上が2兆1342億円、「損保ジャパン・日本興亜」の2社連合が1兆9720億円の順。三井住友海上などの3社連合が東京海上を抜いてトップに立つ。
だが、最終損益の合算では、三井住友海上などの3社連合が95億円の赤字、損保ジャパンなどの2社連合が568億円の赤字なのに対し、東京海上は231億円の黒字を確保し、利益面では優位に立つ。東京海上は経常赤字だったが、株価変動に備えて積み立てていた価格変動準備金を取り崩して、経常赤字を穴埋めした。他社も同様に準備金を取り崩したが、東京海上が財務面での強みを発揮した。
一方、損保ジャパンなどの2社連合は規模と利益の両面で見劣りする。ただ、損保ジャパンは決算発表と同時にブラジルの中堅損保に50%出資することも公表した。経営統合で目指す海外展開を先取りし、追撃を図る構えだ。2010年3月期は各社とも黒字を見込むが、東京海上や三井住友海上も海外収益の比重が高まっており、3メガの海外戦略が勝ち残りのカギを握りそうだ。