ロースクール、映像学部、生命科学部と薬学部――。立命館はここ数年、「膨張」の度合いが加速しているようにも見える。なぜなのか。学校法人立命館総合企画室長の建山和由さんと総合企画部長の今村正治さんに聞いた。
「何人合格を出すのか」に悩む
――一この15年ほどで、「キャンパスが拡大している」という声も多いですね。その象徴的な例が、00年に大分県に出来た立命館アジア太平洋大学(APU)です。当初は「留学生を沢山集めるのは無理。絶対失敗する」という声もありました。ところが、フタを明けてみれば学生のうち4割が留学生という状況で、成功しているようにも見えます。
今村: 7年近くAPUにいましたが、我々が掲げた理念が共感されたことが最も大きかったと思います。立命館の首脳部が構想を平岩外四さん(元経団連会長、故人)に相談した時「こういう大学は、本来は国が作るべき。それを、一私学が地方自治体と組んでやろうとしている。応援する」とのお言葉もいただきました。開校直前には、アジアの金融恐慌の影響も受けたのですが、それでも40億円以上の寄付が集まったのは、アイデアが非常に大胆で、先見的だったことが大きいと思います。ミッションがはっきりしていたのですね。
もう一つは、場所です。当初は、別府の山の中に作ったことについては、現場担当者としては「このような場所でやっていけるのか」と思いました。しかし、「勉強する」という環境ができたのは大きかった。これは、博多の街中では無理でしょう(笑)。
住民の協力が得られたのも成功要因ですね。10周年を間近に控えて、「より卓越した国際大学は何か」を追求していく予定です。
――一06年には法科大学院(ロースクール)、07年には映像学部、08年春には、生命科学部と薬学部もできました。ここ数年、「拡大」の度合いが加速しているようにも見えます。
今村:そうでもないですよ(笑)。近時の改革は学部・学科の再編を進めているのが特徴です。「拡大・膨張主義」と言われることもありますが、「拡大ありき」ではありません。新しい教育・研究領域を創造していきたいということがまずあるのです。それを「どのようなシステムでやるか」を検討してきた結果です。BKCのような「拡充移転」です。確かに、学生数(学部生)を見ると、1979年で約2万2000名ですが、今はAPUを含めると約4万2000名程度です。30年で1.5倍になっています。それだけ見れば「拡大」に見えるのですが、「ふくらし粉」ではなくて、中身も伴っている、ということです。
――一「拡大」と言えば、08年の生命科学部の入学定員超過問題がありましたね。何故起こってしまったのでしょう。
今村:そもそもは歩留まりの見誤りですね。志願者が9000人を超えたのですが、合格者のうち、実際に何人入学するかを見誤ってしまいました。私学助成がもらえなくなる(入学者が定員の)1.4倍という数値を超えないために行った(他学部への転籍をさせようとした)措置が「適切さを欠く」として批判を浴びました。このことは、学園運営のありように問題があったとして厳しく受け止め、総括と反省を行っています。
建山: 「何人合格を出すのか」というのは、非常に悩みます。東大さんや京大さんであれば、100人合格を出せば、その大半が入学してくれるのですが、うちではそうもいかない。2割なのか15%なのか、読めないのです。特に今回は新学部で、「何人合格を出すと何人入学する」という過去のデータがなかったことも大きかったですね。ただ、担当者からすると、欠員が出ると、「立命館は新しい学部を作ったけれども、集まらなかった」ということになるので、欠員を出すことは一番避けたいと思っています。