ここ数年、社内運動会を見直す動きが広がっている。社内の士気が高まる、というのが理由で、新たに実施したり、数年ぶりに復活させたりする会社が出てきた。運営や企画を請け負う会社にも問い合わせが増えているそうだ。
村田製作所は18年ぶり運動会実施
村田製作所は2007年12月2日、京セラドームで18年ぶりの運動会を開催した。集まったのは、社員とその家族800人。運動会では4チームに分かれ、玉入れ、綱引き、ムカデ競争、部門別対抗リレーなどで競った。競技以外にもハワイ旅行をかけたクイズ大会や、ストラックアウトと呼ばれる的当てゲームなども実施。久しぶりの運動には転ぶ人が続出したと言うが、朝集合し、夕方解散するまでの間、上司も部下も関係なく、ドーム内を駆け回ったという。
社内運動会を18年ぶりに企画した理由について、同社の広報は「だんだん会社の規模が大きくなってくると、社員同士にも知らない人がいました。それでは組織が活性していかないと思い、社員一体になって盛り上がる企画をと考えました」と明かす。実施後の社内の雰囲気はどうなったのか。
「仕事の際、わからないことがあったら気軽に相談できるようになったという声を聞いています。また、知り合いが増えたという意見もあり、コミュニケーションの活性化には一役買ったのではないかと思います」
村田製作所以外にも、住友商事は2007年6月に、伊藤忠商事は2008年11月に、三菱商事も2009年3月に、数年ぶりの社内運動会が行われたという。一方、ダイニチ工業や京セラなどでは毎年行われ、30回以上が開催されている。
WEBサイト「運動会ドットコム」を運営するセレスポでは、こうした社内運動会の企画・運営を請け負っている。2008年度は前年度に比べて、依頼が2倍に増えたという。セレスポでは開催場所の確保や会場のセッティング、希望によっては料理を販売する屋台を設置するなどして、企業の運動会をサポートしている。
運動会成功が若手社員の自信に
ところで、なぜ運動会なのだろうか。飲み会やパーティー、社内旅行でもいいのではないだろうか。セレスポの担当者は「幹事役には30代半ばの方が多く、一致団結のイメージのある運動会には魅力を感じているのではないでしょうか。そうすることで、社内の組織力を高めていきたい――そんな意気込みを感じます」と話す。
また、社内運動会の企画を手がけるコミューン(京都府京都市)。同社でも社内運動会に関する問い合わせは3年前に比べると、5倍に増えているそうだ。代表の濱中倫秀さんは、「社内の運動会はバブル期以降、経費削減などで実施されていませんでしたが、2005年頃から、連帯感を強めたいということで注目されはじめました」と指摘する。社員同士が協力することが、社内風土の向上につながるというのだ。
とはいえ、運動会と聞いて、最初は抵抗感のある人は多いのではないか。怪我の心配や業務への支障、休日出勤の煩わしさをこぼす人は少なからずいる。濱中さんも、「最初は反対する人も多いんですが、運動会当日は必ず盛り上がります」とプッシュする。
「終わった翌日は、社内では運動会の話で持ちきりになりようです。あのときはこうだった、ああすれば良かったという具合に。組織の風通しがよくなったという声はよく聞きます。また、運動会前には、実施する会社の幹事と打ち合わせをしています。幹事には若手社員が多いんです。彼らは仕事の合間を縫って企画していますから、運動会成功ともなると、自信にもなるみたいです」
なお、日本能率協会が2009年4月23日に発表した「会社や社会に対する意識調査」によると、新入社員の60.5%は職場の先輩との人間関係構築には「運動会」が有効であると答えている。