「フライデー」が小向美奈子さんのストリップ写真を掲載したことについて、劇場側が「無断で撮った」と怒っている。「罰金」は300万円といい、法的手段を検討していると明かすほどだ。一方、フライデー側は、表現の自由を示唆しており、その取材手法を巡って主張が分かれている。
講談社、表現の自由をほのめかす
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ピンク色のライトが、妖しくステージを浮き上がらせる。そして、ひざまずいた姿で、白いレースのブラをゆっくりと外し…。
「フライデー」の2009年6月12日発売号には、そんなシーンを撮った写真が2ページぶち抜きで載っていた。元グラビアアイドルの小向美奈子さん(24)が、東京・浅草ロック座で踊ったストリップ舞台だ。写真では、90センチのFカップという「スライム乳」がはっきりと写っている。
「出る」「出ない」と騒ぎになり、5日の初日はファンやマスコミが殺到。それだけに、劇場側は、無断撮影に神経を尖らせ、連日、入り口では異例のボディーチェックを行っている。撮影の「罰金」額も、通常の6倍の300万円にまで設定したほどだ。報道によると、カメラ所持が発覚して、退場させられたファンもいたという。
ところが、そんな監視網をどうくぐり抜けたのか、小向さんがフライデーされてしまった。写真誌では、スライム乳ばかりでなく、Tバックの後ろ姿など計3枚のステージ写真が掲載されている。
もちろん、興行の世界だけに、裏で何かある可能性はある。しかし、ロック座では、取材に対し、フライデーのステージ写真について不満をぶつける。
「無断で撮ったもので、とんでもないですよ。法的な手段を考えており、弁護士と今相談しています」
これに対し、講談社のフライデー編集長は、表現の自由をほのめかしながら、「記事にあることがすべてです。それ以外、特別にコメントすることはありません」とだけ言っている。
劇場の営業権との兼ね合いが問題
メディアの問題などに詳しい紀藤正樹弁護士は、フライデーの写真掲載について、まず次のような点を指摘する。
「だれが撮ったのか特定できなければ、訴訟は難しいでしょう。編集部のカメラマンが撮ったのか、客が写真を持ち込んだのか、ということもあります。罰金は、写真を撮った人に課せられるというのですから」
特定できないとしても、劇場が営業権侵害を訴えることはできる。とはいえ、紀藤弁護士は、表現の自由との兼ね合いをどう考えるかという問題が残ると言う。
「一般的に言いますと、国民の知る権利という点で、表現の自由が優先される可能性があります。売り上げが減少したとしても、それが掲載したことによるものか、人気が落ちたことによるものか、因果関係が証明できないと思います。講談社が勝つ可能性が高いでしょうね」
もっとも、営業権や人格権を認めて、10~20万円の損害賠償を認められた判例もあるという。「劇場側が勝つ可能性がないとは言えません。しかし、同じくらいの慰謝料程度の額で、大きな金額にはならないと思います」
結局のところは、ステージ写真掲載のニュースバリューによる部分が多いと紀藤弁護士は言う。
「コンサートの写真は、無断で撮っていいわけではありません。社会的にみて、記事の重要性が求められます。どうでもいいような写真なら、劇場側が勝つことになるでしょう。そのあたりは、裁判官の判断になりますね」