株価が1万円台に回復してきた一方で、金融関係者やエコノミストらからは「2番底」を警戒する声が漏れている。米国経済をはじめ明るい兆しが見られるようになった半面、国内のさまざまな経済指標を見ると、見通しの明るいデータと暗いデータが混在、不透明さは拭えない。さらには「2番底」のきっかけが「欧州にある」との指摘もあるのだ。
株価8か月ぶりに1万円台乗せ
2009年6月12日の東京株式市場の日経平均株価は、終値で前日比154円49銭高の1万135円82銭だった。前日に、08年10月以来8か月ぶりに1万円台に乗せたが、それをあっさり更新。一時1万170円82銭の年初来最高値をつけた。
ゼネラルモーターズ(GM)の破たん処理や、公的資金を資本注入している金融機関がその返済を急ぐなど、米国経済に明るさが見えてきたことで「底打ち感」が広がった。
国内ではトヨタやホンダ、日産などの自動車産業のエコ減税効果や家電商品のエコポイント効果といった政策が機能しはじめたとの見方があって、これが輸出産業全体に「持ち直し」を印象づけた。
6月11日は原油先物相場の上昇から資源株に買いが集まったほか、内閣府が発表した実質国内総生産(GDP)改定値の上方修正や、外国為替が円安にふれたことも買い材料になった。
翌12日は金融株や小売りが買われた。
欧州に不安材料「東欧ショック」が引き金か?
「景気は底を脱した」というエコノミストは少なくないが、このまま景気が右肩上がりで回復していくかは不透明だ。実際に、内閣府などが発表した経済指標は「玉虫色」。日本銀行が発表した5月の企業物価指数は、前月比0.4%減で、9か月連続で下落。デフレが懸念されている。
また、内閣府の4月の機械受注統計(季節調整値)では自動車や電機の受注は増加したものの、民間設備投資は前月比5.4%減った。モノを積極的に増産していこうというムードにはまだない。
あるエコノミストは「いまの投資マネーは、限られた資金が右(債券など)から左(株式)に動いているにすぎない」と分析、株式市場が本格的に活性化するにはなお時間がかかるとみている。
さらに気になるのが欧州の動向だ。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「景気底入れムードと根強いオバマ人気から米国の景気回復への期待が高まり、逆に欧州の景気悪化の深刻さがクローズアップされる。今後、欧州が(株価下落の)引き金になる可能性はある」と指摘する。
枝川氏はこう続ける。「欧州はスペインやアイスランド、ハンガリーなど、バブル崩壊の影響が大きな国が息を潜めている状況。たとえば、ここ数年のドイツ経済を支えたのは東欧でのもうけで、その意味で東欧と西欧の経済は一体化していた。しかし、だからといって西欧がいまの東欧を助けることはできない。ドイツやフランスも、自分たちが苦しい中ではなかなか難しい。欧州は一つのようでも、一つではないということだ」
欧州経済の悪化が、国内の輸出産業に再びダメージを与えて、株価を押し下げる。そのときが「2番底」になる心配がある。