「8頭身」の外国人女性モデルが軽妙な音楽に合わせて舞台を行き来し、カメラのフラッシュを浴びる。2009年6月4日、東京・原宿のファッションビル「ラフォーレミュージアム原宿」で開かれたファッションショー。主催したのはデザイナーズブランドではない。大手スーパーの西友が、2009年夏物婦人衣料の新作発表会として実施した試みで、多くのマスコミ関係者が詰め掛けた。
今夏の流行といわれるエスニック風デザインのワンピースも
キャッチフレーズは「安いのにカッコイイ」。低価格だが「ダサイ」印象が強いスーパー衣料品のイメージを覆そうと、同社が「西友ファッションプロジェクト」と名付けた商品改革の一環だ。親会社である米ウォルマートが数年前に、店舗のないニューヨーク・マンハッタンでショーを開いて話題を集めたことにあやかった。
同社の野田亨最高執行責任者は「衣料品に対して感度が高い人が集う場所でショーを行うことで、若い女性などへの認知度を高めたい」と話す。
モデルが身にまとったのは、同社の親会社、米ウォルマート・ストアーズ傘下の英アズダが開発したプライベートブランド(PB)「ジョージ」の婦人服新商品「トラベラー」。今夏の流行といわれるエスニック風デザインのワンピースなど約60アイテムで、価格帯は997~3990円。5日から全国70店で発売した。
ファッションショーでは、「ジョージ」ブランドの紳士服や子供服の品ぞろえも順次増やし、ブランド全体の品ぞろえを2009年末に2300前後に拡大する方針が発表された。低価格ながらデザイン性と品質の良さを兼ね備えた「ユニクロ」や「ザラ」(スペイン)といった人気ブランドに立ち向かう意図は明らかだ。
下取りセールも、衣料品では客足回復の決め手になっていない
消費不況の直撃を受けるスーパーの中でも、とりわけ不振なのが衣料品だ。全国スーパーの4月の売上高は前年同月比11.7%減で、3年4カ月連続の減少。従来はスーパーの専売特許だった肌着などの低価格商品も、ユニクロなど専門店の攻勢にさらされる。ジャケットやスーツでも品ぞろえに勝る紳士服チェーンや、安売り競争に参入してきた百貨店への客足流出に歯止めがかからない。
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が先陣を切った下取りセールも、衣料品分野では客足回復の決め手にはなっていないとされる。夏服商戦で「打倒ユニクロ」を目指す西友の試みが起死回生の一手になるのかどうか、スーパー業界の注目が集まっている。