エイベックスとNTTドコモが提供しているケータイ専用チャンネルの「BeeTV」が絶好のスタートを切った。サービスを開始して1か月が過ぎ、総ダウンロード数で1000万件を突破した。独自のコンテンツにこだわり、また広告に頼らない有料配信のビジネスモデルが注目されたが、「テレビのコンテンツに頼らないのが勝因。ワンセグ携帯は大きく水をあけられるだろう」(三菱総合研究所・情報通信政策研究グループの中村秀治氏)と評価も高く、新たなケータイ・コンテンツへの期待が膨らんでいる。
1か月で総ダウンロード1000万件を突破
BeeTVはコンテンツの違いでユーザーを惹きつける!
YouTubeやニコニコ動画など、いまや動画はパソコンや携帯電話から簡単に見ることができて、どこでも楽しめる。最近では電車の中で見たいテレビ番組を、ワンセグ機能を使ってイヤホンをしながら見ている人も増えてきた。
そこに登場したのが、エイベックスのケータイ専用チャンネル「BeeTV」だ。提携先のNTTドコモ(ドコモ動画)で見ることができる。
BeeTVは8チャンネル・21番組を、月々315円を支払えば楽しめる。メニューにはバラエティやドラマ、トークショーとテレビ番組とほとんど変わらぬラインナップだが、ケータイ専用のコンテンツとして制作され、1番組3~8分程度と短いのが特徴だ。
エイベックスによると、配信している番組の総ダウンロード数は1000万件を突破した。「会員数については現在集計中でお話できません」(BeeTV広報)としているが、2009年5月1日のスタートから、月末には30万人を突破したとされる。
三菱総合研究所・情報通信政策研究グループの中村秀治氏は、好調の要因を「コンテンツの品質が高い」ことにあるとみている。BeeTVは、ケータイでテレビ番組を見るワンセグとの違いを明確にして、オリジナルにこだわり、テレビ番組と一線を画したところがユーザーの支持につながったようだ。
ドコモ・ユーザーも増える?
中村氏は「ケータイのコンテンツは15分でCMが入るテレビ番組では長く、7分程度という時間はちょうどいい」という。
番組は当初からコンテンツの2次使用、3次使用を意識したつくりで、初期の制作コストを抑えている。さらに、たとえば100万人のユーザーが見るようになれば、年間売上げは36億円となり、コンテンツ制作にそのうちの10億円をかけられるとしたら、今後ますます高品質のコンテンツが提供できるはずだ。
中村氏は「既存のテレビ局が1回1回の放送にこだわったビジネスモデルでもたついていると、コンテンツの制作や活用で大きく水をあけられる可能性がある。いまだに上手に活用できないワンセグ機能も危うい」と指摘している。
一方、BeeTVはドコモとau、ソフトバンクモバイルのユーザー獲得争いにも影響しそう。BeeTVを見るには、ドコモの「パケ放題」への加入が前提。技術面でも「ドコモは映像を見るためのネットワーク回線の質も高く、BeeTVのような映像配信はauやソフトバンクモバイルではすぐには難しい」(中村氏)と、ドコモの先行メリットは小さくないようだ。
ドコモが905iシリーズ以降の携帯端末の液晶画面を統一したことも、BeeTVの成功を引き出しているとみている。
一般に、「ケータイ・ビジネスは有料ではもうからない」とされた。BeeTVがそんな定説を覆すかもしれない。