100年に1度といわれる不況下でも、10万円前後のクリーム状化粧品が売れている。資生堂の12万円のクリームは順調に伸びているというし、同じく12万円のクリームを出しているカネボウ化粧品も2009年は9000個売る目標を立てている。高級クリームの先駆者、コーセーも、リーマンショック以降も9万円のクリームの売れ行きは変わらない。「きれいになるためならいくらでも出す」というのが女心のようだ。
不況の影響を受けず「順調に伸びている」
カネボウ化粧品は、化粧品専門店ブランド「トワニー」から1個12万6000円の薬用エイジングケアクリームを出している。
05年に発売を開始し、初年度は1万個強が売れた。それ以降も年間およそ1万個のペースで出ている。
受注生産方式をとっていて、09年は6月16日から予約を受け付ける。この不況下で、どのくらいの注文を見込んでいるのか。
カネボウ化粧品広報担当者は、
「75%のお客さまがリピートです。しかも、発売以来4年連続で購入している方が多いんです。化粧品は不況の影響を受けにくいと言われていますし、5年連続で予約してくださる方も多いではないでしょうか」
と期待している。9000個の目標も軽くクリアできると踏んでいるようだ。
購入者は50~70歳代が7割を占め、1年分をまとめて買っていく人もいる。20~40歳代で使っている人も3割。シワが気になる部分だけに使っていたり、働いている女性だと仕事の「プレゼン」や特別なことがある前夜に使ったりするらしい。
「きれいになるためならいくらでも出す、というお客さまもいます」
もっとも、生活に余裕のあるお客が多く、生活費を削ってまでして買うという人は少ないそうだ。
資生堂も百貨店専用ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」から12万6000円のクリームを08年9月に発売した。
発売後、まもなく不況に直面したものの、その影響を受けず、「順調に伸びている」(広報担当者)。年齢に関係なく、化粧品への投資意欲の高い女性が使っているそうだ。
生活費減らしても、化粧品だけは落とさない
化粧品の市場規模はおよそ2兆円と言われ、そのうち2万円以上の「超高価格帯」化粧品が占める割合は数%程度だが、化粧品メーカー各社は相次いで新商品を投入し、年々拡大している。資生堂によると、07年の超高価格帯市場は04年に比べて24%伸びた。
高価格クリームの先駆けとして、9万4500円のクリームを2000年から発売しているコーセー。百貨店ブランド「コスメデコルテ」の最高級ライン「AQ」のなかでも、ひときわ高価格のシリーズ「ミリオリティ」を展開している。
「初年度は1万1000個売れて、それからも継続して売れている商品です。リーマンショック後の08年12月の販売数は前年同月と比べて、ほとんど変わっていません」
エイジングケア用のクリームだが、老化防止に「クリームだけは高いものを」という20~30歳代にも売れていている。
こんなアンケート結果もある。
ポーラ文化研究所は首都圏に住む15~64歳の女性1500人に、化粧品への「投資」意欲について09年4月に聞いた。
不況下で女性の45%が生活費を減らす予定としている一方で、化粧品への出費予定をたずねると、「スキンケア化粧品」購入者の76%、「メークアップ化粧品」購入者の73%が、「金額を増やす」「今までどおりの金額」と答えた。「金額を減らす」という回答は2割程度にとどまった。
「本音は減らしたいけれど年齢から考えてもこれ以上減らせない」(29歳 専業主婦)
「激安化粧品を使うと肌に良くない気がするので今の物より金額を落としたくない」(42歳 専業主婦)
というのが「変えない」派の理由だ。
一方、減らすという回答が多かったのは「飲食店での食事」(49%)と「ファッション」(42%)だった。