ここ半年ほどで、「太陽の黒点が少ない」という指摘が相次いでいる。黒点は11年周期で増減を繰り返し、これからは黒点の数が増える時期なのだが、そのペースが遅れているというのだ。過去、黒点が観測されなかった時期に寒冷期が訪れたということもあり、寒冷化を懸念する声もあがっている。
08年から活発に、2011年頃にはピークのはずだった
黒点の数の変化には要注意だ(NASAウェブサイトより)
黒点は、太陽の表面にシミのように見える黒い部分だ。太陽の表面温度は約6000度なのに対して、黒点の温度は約4000度と低いため、黒く見える。磁石の様な強い「磁場」を持つのも特徴で、黒点の周辺では「フレア」と呼ばれる大爆発も多く発生する。黒点が多いほど、太陽の活動が活発だとされる。
黒点は11年周期で増減を繰り返し、通常のペースでいけば、08年から活発に出現し、2011年頃には出現のピークを迎えることになっている。
ところが、米航空宇宙局(NASA)やベルギーの「太陽黒点数データセンター」の調べによると、活動が約100年に1度の低水準にあるのだという。前出の「太陽黒点数データセンター」の観測では、08年に黒点が観測できなかった日数は266日。過去4番目に多い日数だ。
国立天文台によると、09年3月に、1日に観測できた黒点の平均個数は0.74個で、4月が1.23個、5月が2.9個。少しずつ増えているようにも見えるのだが、同天文台では
「これから黒点の数が増えていくはずなのですが、確かに、そのペースが遅れ気味です」
と話す。
黒点がほとんど観測されなかった時期に欧州が寒冷化
一部では、今回の状況を、かつての寒冷期と結びつける動きもある。1645年から1715年にかけて、「マウンダー極小期」と呼ばれる、黒点がほとんど観測されなかった時期があったのだが、この時期はロンドンのテムズ川が凍るなど、欧州が寒冷化。農作物が実らずに、飢饉が発生したという。ただ、この時期についても、黒点の増減と寒冷化との因果関係は不明だ。さらに、最近の黒点が少ない点についても、国立天文台では
「諸説あるのですが、その原因ははっきり分かっていません。まぁ、『急速に寒冷化が進む』といったように、すぐに困ることにはならないでしょう。太陽は生き物みたいなものですし、すぐに今後の動きが予想できるようなものでもありません」
と、結局のところは「複雑なので、良く分からない」という立場のようだ。
地球温暖化問題の話題では必ずといっていいほど登場する、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも、07年発表の第4次報告書で、太陽活動についての検討を進めていくことを明らかにしている。ただ、太陽活動が温暖化や寒冷化にどの程度影響するかについての研究は、まだ進んでいないというのが現状だ。
いずれにしても、今後も、黒点の数の変化には注意が必要そうだ。