未曾有の不況で海外高級ブランドの販売が落ち込み、国内市場は12年間でおよそ半分の規模にまで縮小した、という調査結果が出た。ブランドブームを支えてきた「中産所得層」が減っていること、若年層の「ブランド離れ」が顕在化していることも響いている。2009年の高級ブランド市場はいったい、どうなるのか。
02年以降は年々、数百億円規模で縮小
矢野経済研究所によると、08年の海外高級ブランドの国内市場規模は1兆643億2600万円(小売金額ベース)で、前年比89.8%の大幅なマイナスを記録した。最盛期の1996年をピークに、12年間で約8000億円も縮小して、規模はおよそ半分近く(56.1%)になった。
インポートブランドを展開するファッションアパレル、ブランドの日本法人、商社に09年2月~5月に調査を行い、6月2日に発表した。
ここでいうインポートブランドとは欧米から輸入している高級品の類で、レディスウェア、メンズウェア、ベビーウェア、かばん、靴、ネクタイ、スカーフ、ベルト、手袋などの10分野を対象にしている。構成比は、「かばん・革小物」が45.4%と大きく占め、ついで「レディスウエア」が20.5%、「靴」が13.6%だ。
J-CASTニュースはこれまでにも高級ブランドの苦戦ぶりを報じてきたが、 それを示す数字はなかった。今回の調査結果で「ブランドの凋落」が決定的であることが分かった。
調査によると、ピークだった1996年の1兆8971億円を境に、97年は1兆6612億円、98年は1兆5674億円、99年は1兆3477億円、2000年は1兆2137億円と減り続けている。01年は持ち直して1兆3312億円だったが、02年以降は年々、数百億円規模で縮小している。
08年は02年以降でもっとも大きく減少
08年は縮小幅が約1200億円と、02年以降でもっとも大きく減った。
「08 年9 月以降の『リーマンショック』をきっかけとした未曾有の不況が最大の要因で、高額品中心とした消費者の『買い控え』を急速に招いた」
と矢野経済研究所はみる。
また、ブランドブームを支えてきた「中産所得層」が減っていること、ブランド次世代層となる30 歳代以下の「百貨店離れ」、「インポートブランド離れ」が顕在化してきていることもある。
伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、丸紅といった大手商社を含む84社の業界団体、日本繊維輸入組合(JTIA)によると、08年の繊維製品の輸入額は前年より1679億1600万円少なく、3兆2636億7200万円だった。
国別の内訳は、イタリアが1236億6600万円(前年1446億1200万円)、アメリカが425億1400万円(491億2700万円)、フランスが198億1200万円(250億6200万円)と、いずれも前年より数百億円少ない。
JTIAは、
「欧米から仕入れているものの多くが高級ブランドで、08年秋以降の不況で(高級ブランドの)国内需要が減り、大幅に少なくなりました」
と説明する。
09年、1兆円の大台を割り込むか?
09年の高級ブランド市場はどうなるのだろうか。
東京・新宿の老舗百貨店で09年5月に行われたインポートブランドの秋冬物受注会に参加したという都内会社員女性(30)。一足早くブランドの傾向を知られるとあって、年2回行われる受注会に2年前から参加しているが、今回は「異変」があったと話している。
「たいてい土日に行われ、特に土曜は混むのですが、今回はお客が誰もいなくて、びっくりしました。閉店1時間前だったので、もう帰ったのかと思いましたが、お客の注文が書き込まれた台帳を見せてもらうと、まっ白でした。かろうじて注文が入っていたのは、いずれも同じ名前でした」
矢野経済研究所は、「09年の高級ブランド市場規模はさらに縮小し、1兆円の大台を割り込むだろう」と予測している。