夕刊紙「内外タイムス」に「エロ記事」が復活した。新しい経営陣の意向で2009年4月から約1か月間、風俗情報や広告を掲載していなかったが、「娯楽紙としてあるべき姿」に戻すため、方針を転換したという。また09年6月1日には異例の「故内外タイムス新聞葬」を開催。「新聞名」を一般公募することも発表した。いったい何があったのか。
「夕刊紙に政治経済記事を期待するなど」
内外タイムス社は08年11月、不動産事業のアムス・インターナショナルに買収された。このオーナーの意向が「日経新聞のような夕刊紙を目指す」ということで、「エロ記事」の掲載を09年4月6日から取りやめていた。
だが、この方針に読者は反発。内外タイムスの公式サイトにある掲示板「世間に一言」にも、
「紙面の方向転換については、とても残念です。夕刊紙に政治経済を期待するなど、経営陣の錯誤です」
「ストリップ劇場の広告載ってるかぎりは買い続けてたが、僕ももう買わないですね」
と残念がる書き込みが目立っていた。
そういった声を反映してか、部数も伸び悩み、経営も行きづまった。そしてついに09年5月8日、臨時株主総会が開かれ、前経営陣とは「決別」。紙面を再び「娯楽紙としてあるべき姿」に戻すことを決めたという。「エロ記事」も5月22日から掲載を再開した。内外タイムスの担当者は、「夕刊紙で誰も政治・経済なんて堅いものは読みたくないですよね」とし、「風俗情報だけでなく、本来『内外タイムス』としてやっていた、会社帰りにホッと一息つける記事」を目指して紙面づくりに励むと話している。新しい経営陣に関しては具体的に名前を明かさなかったが「色々な事業を展開している企業」として、「今月末の定期株主総会後には、正式に発表できるでしょう」と話している。
「正直、広告は減っちゃっていますね」
ただ、今回の影響は大きかった。内外タイムスの風俗情報を掲載しているウェブサイト「内外タイムス三行広告本家」を運営するプランニングオフィス・エーの担当者は、
「正直、広告は減っちゃっていますね」
と内情を明かす。風俗記事が掲載されていなかった約1か月の間、一時的に他の新聞へ広告が流れるなどしており、すぐに戻すというのは難しいという。
「今回の再転換で部数が増えてくれれば広告も戻り、伸びてくると思うんですが」
と、今後の回復に期待、という様子だ。
内外タイムスも手をこまねいているわけではない。創刊60周年を迎えた09年6月1日には「故内外タイムス新聞葬」と銘打って都内で異例の「社葬」を行った。同日発売の「内外タイムス」一面には「内外死から生へ」と報じ、再起をアピール。同時に「生まれ変わり」をアピールするため、新しい「新聞名」を一般公募している。社名は「内外タイムス社」で変わらないが、夕刊紙「内外タイムス」の「新聞名」を応募のなかから1か月程度かけて選定し、改称するという。
前出の内外の担当者は、「夕刊紙4紙の中でも厳しい状況にある」と明かし、「歴史ある『内外』を取り戻そう!という意味でのイベント」と説明。「今後も積極的に事業展開していくので、本来の読者が戻ってくることを期待している」と話している。