長期金利が上昇基調にある中で、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行などが住宅ローン金利を引き下げた。どの銀行も企業融資の伸び悩みを住宅ローンで挽回しようと懸命で、その積極姿勢を金利で表した。また、住宅金融支援機構は新たに、最長50年も適用金利を固定した住宅ローン「フラット50」を投入する。住宅ローンの獲得競争が熱を帯びてきた。
金利引き下げ「実需」を喚起
米国債券相場の下落と財政悪化による国債の増発、また株価の上昇で投資マネーが国債から株式にシフトしはじめたことを背景に、長期金利が上昇している。2009年5月28日に一時1.5%台に乗せ、翌29日も1.480%をつけたことで、連動する住宅ローンの金利も、4、5月に続き6月も上がるとみられていた。
ところが、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行は住宅ローン金利を引き下げた。
固定金利期間10年もので、三菱東京UFJ、三井住友、りそなが0.05%引き下げて年3.90%とし、4行がそろった(みずほ銀行は据え置き)。期間5年ものは、みずほが年3.55%、他の3行は年3.60%。3年ものは0.05~0.10%引き下げて、4行とも年3.30%にそろった。
一般に住宅ローンの金利は月1回、長期金利を指標に、他行との競合や住宅ローンの推進方針などを加味して決めている。長期金利は6月2日に再び1.52%と上昇したが、みずほ銀行は「今月の動きを見て、来月また決めることになります」と話す。
借り手にとって、金利の引き下げは返済負担が減るのでありがたい。みずほ銀行は「住宅ローンは実需しだい」という。いまは住宅ローン減税などの後押しもある。「とにかく住宅ローンが売れる環境をつくることが大事だ」と強調する。
「50年固定、5%弱」はお得なのか?
そうした中で、住宅金融支援機構は6月4日から、いわゆる「200年住宅」を対象とした「フラット50」を発売する。取り扱い金融機関は地方銀行や信用金庫、住宅ファイナンス会社など現在41行(社)で、大手銀行ではみずほ銀行とりそな銀行の取り扱いが決まっている。
50年もの超長期で金利が固定される、この住宅ローンは、金利は年5%弱と高めだが、借り手にとっては毎月の返済額を抑えられ、かつ将来金利が上昇しても返済額が変わらない安心さがある。
「200年住宅」の促進という、国の狙いもある。
しかし、「フラット50」に対する銀行の目は冷ややかだ。「人生の半分をローンの返済に費やすことを選ぶ人が、果たしているのか」と、ある大手地銀の幹部は懐疑的にみている。
銀行の住宅ローンの売れ筋は、固定金利期間3年。長くて5年、「固定」といえども、毎年見直す人も少なくない。
「借り手は短期と長期の住宅ローン金利とを比べて、金利がしばらく上がらないと予測すれば、返済比率を抑えるために固定期間の短い住宅ローンを選ぶ傾向にある」(前出の地銀幹部)。
銀行側に、できるだけ金利変動リスクや貸倒リスクを抑えたいため、長期の住宅ローンを避けたいという思いが働いていることもある。
金利の上昇局面では、借り手は低金利のうちに「長期・固定」で借りたいとのニーズが強まることはある。それを見越しての「フラット50」ではあるが、借り手にしてみれば、銀行の住宅ローン金利と1~2%もの開きがあってはなかなか手を出せない。
借り手は金利に対して敏感で、「フラット50」のお得感が見えてこない。